「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」に関する会長談話

このたび、「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」(以下、「基本法」という)が成立した。


同法は、前文および1条において、国の隔離政策によりハンセン病の患者であった人々が地域社会において平穏に生活することを妨げられ、身体及び財産に係る被害その他社会全般にわたる人権上の制限、差別等を受けてきた事実を明確に指摘し、ハンセン病問題に関する政策の目的が隔離被害の回復であることを明らかにした。更に、入所者の意思に反する退所・転所を禁止し、療養所の施設や敷地を地域住民や自治体が利用できるようにして地域住民との交流を深め、施設の活性化を目指すものとなっている。


当連合会も、2001(平成13)年6月21日、「ハンセン病患者であった人々の人権を回復するために」(勧告)において、国に対し、終生在園の保障と療養所の医療・看護体制などの整備・充実を求め、2005(平成17)年9月28日にも、入所者が安心して余生を過ごすことを可能とする、医療・看護・介護体制の充実などを求めて、再度国に対し、「ハンセン病患者であった人々の人権を回復するために」とする勧告を行なった。更に本年1月25日には、「国立ハンセン病療養所の将来構想に関する会長声明」を出して、入所者の減少に伴う施設の医療機能の低下を防ぐべく、「権利としての終生在園を真に保障するとともに、社会において生活するのと遜色のない医療と生活を保障するためには、療養所の将来の在り方を見直し、多目的な施設とすることを可能にするなど、療養所を地域社会に開かれたものにしなければならない。」と指摘したところである。


基本法は、ハンセン病患者であった人々やらい予防法違憲国家賠償請求訴訟弁護団の意見を真摯に受け止め、当連合会も指摘してきた上記の視点をとりいれた内容となっており、評価されるものである。


しかし、同法自身が指摘するとおり、ハンセン病の患者であった人々が受けた被害の回復の為には、「未解決の問題が多く残されている」のであり、他方、入所者の平均年齢がほぼ80歳に至っていることに鑑みれば、被害回復および各療養所の将来構想の具体化を早期に進める必要が存することは明らかである。


当連合会は、人権擁護ならびに社会正義の実現をその使命としながら長く当該被害を見過ごしてきた自らの責任を改めて自覚し、今後とも一層ハンセン病の患者であった人々の人権が確実に回復されるための取り組みが必要であることを銘記し、関係機関と協同して、ハンセン病問題の全面的解決のために取り組んでいく決意である。


2008年(平成20年)6月11日


日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠