国籍法違憲訴訟最高裁大法廷判決に関する会長声明

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本日、最高裁判所大法廷は、日本人の父と外国人の母の間に生まれた後、父親から認知を受けた子どもに日本国籍があることの確認を求める2件の訴訟について、日本国籍を認めなかった東京高等裁判所の判決を破棄し、いずれの子どもたちにも日本国籍があることを確認する判決を言い渡した。

 

これまで国は、日本人を父、外国人を母とする子どもであっても、両親が法律上の結婚をしていない、いわゆる婚外子については、出生後に認知を受けても日本国籍は認めないものとしてきた。

 

これに対して当連合会は、本件と同様の境遇にあった子どもからの人権救済申立を受けて、1996年6月、このような国籍法の解釈運用は、憲法14条1項の規定する法の下の平等に違反する差別であり、国際人権自由権規約24条等、子どもの権利条約2条にも違反するとして、解釈運用を改め、また疑義のないように国籍法を改正するよう求める警告を国に対して行ったところである。

 

また、国連も、日本政府報告に対する国際人権自由権規約委員会の総括所見(1998年)、日本政府報告に対する子どもの権利委員会の最終見解(2004年)などで、婚外子に対する国籍法上の差別撤廃を勧告してきた。

 

今回の判決は、諸外国においても婚外子に対する法的差別を解消する方向であること、日本が批准した人権諸条約においても子どもが出生によっていかなる差別も受けないと規定していること、国際化の中で親子関係のあり方が多様化していることなどに鑑み、遅くとも2003年時点では、父母の婚姻を要件とした国籍法3条1項の規定は、認知を受けた婚外子に対する差別にあたり憲法14条1項に違反するから、日本国籍を認めるべきであるとした。

 

今回の判決は、国際人権基準に従って違憲と断じた画期的な判決として、高く評価する。

 

当連合会は、国に対して、直ちに国籍法の差別的な解釈運用を改めるとともに、既に当連合会が1996年から改善を求めていたことにも鑑みて、国籍取得の機会を逸してきた同様の境遇にある人たちについての救済措置をとり、また、この取扱いを明確にするべく国籍法の改正を行うよう、改めて求めるものである。

 

同時に、国の各機関に対し、今回の判決を契機として、憲法のみならず国際人権法を遵守して日本社会からさまざまな差別的な取扱いを撤廃するよう強く求めるものである。

 

2008年6月4日
日本弁護士連合会
会長 宮﨑 誠