袴田巌氏の再審請求事件の最高裁決定に対する会長談話
最高裁判所第二小法廷は、昨日付で袴田巌氏の再審請求特別抗告を棄却する旨の決定をした。
袴田事件は、事件から1年後の1審裁判中に現場近くの味噌タンクから発見された5点の衣類を決定的証拠とし、代用監獄における長期の強制的取調べの結果得られた自白も有力な証拠として死刑判決が言渡されたものである。しかし、5点の衣類は犯行時の着衣とも、袴田氏のものとも思われない幾多の不合理な点があり、ねつ造の疑惑に包まれている。再審請求審になって、この5点の衣類はもとより、凶器とされたくり小刀と被害者の傷などについて多くの新証拠が提出されている。最高裁には、再審請求を斥けた静岡地裁と東京高裁の不当な判断を取り消して、再審の開始をすることが強く求められていた。にもかかわらず、本決定が、確定判決の事実認定に合理的な疑いが生じる余地はないとして、再審開始を認めなかったことは、極めて遺憾である。
1981年の再審請求直後から袴田氏を支援してきた当連合会は、今回の最高裁の決定を容認できず、引きつづき死刑判決の誤りを正すため、支援を続けていくとともに、不法な取調べの温床となっている代用監獄の廃止、取調べの可視化(全過程の録画)など、えん罪を防止するための制度改革を実現するために全力を尽くす決意である。
2008年3月25日
日本弁護士連合会
会長 平山 正剛