日教組ホテル利用拒絶に関する会長談話

日本教職員組合(日教組)が本年2月2日に開催を予定していた教育研究全国集会の全体集会の会場使用をグランドプリンスホテル新高輪が契約に違反して使用拒否をした件につき、東京地方裁判所は、本年1月16日、仮処分決定をもって使用拒否をしてはならないことを命じ、東京高等裁判所も本年1月30日、日教組の会場使用を認め、ホテル側の抗告を棄却した。


しかしながら、ホテル側は、自ら契約を締結しておきながら、しかも会場使用を認める裁判所の決定があったにもかかわらず、街宣車の大騒音等により周辺住民等に迷惑がかかると判断したとして、日教組の会場使用を拒否し続け、これによりやむなく全体集会の開催が中止される事態に至った。


集会の自由は、憲法21条によって保障され、市民がその意思を交流し、表現するための極めて重大な基本的人権である。我が国が批准している市民的及び政治的権利に関する国際規約21条も平和的な集会の権利を保障している。


このような集会の自由及び平和的な集会の権利は最大限保障されなければならないことは言うまでもない。ホテル側が使用拒否の理由とする、周辺住民等への迷惑については、東京高裁が「(ホテル側が)日教組や警察当局と十分に打ち合わせをすることで混乱は防止出来る」と指摘している通り、会場使用を拒絶する理由とならず、ひいては市民の集会の自由を侵害することにすら繋がりかねない。


それにもかかわらず、ホテル側が裁判所の決定さえ無視して全体集会会場の使用を拒否するに至ったことは、企業の社会的責任が強く問われる現代に逆行するものであるばかりか、憲法第21条の精神にてらし、極めて残念なことである。また、不法な圧力に屈する結果を招来しているといわざるをえない。


こうした事態が拡がることになれば、今後、市民にとって極めて重大な意味を持つ自由・人権が危機にさらされ、法による支配を揺るがす事態を招来することとなる。


よって、当連合会は、今般のホテル側の会場使用拒否が極めて遺憾である旨を表明するとともに、集会の会場を使用させる企業等に対して、集会の自由という基本的人権を尊重し、その社会的責任を自覚して、今後二度とこのような事態を招かぬよう強く要請するものである。


2008年(平成20年)2月8日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛