在外被爆者からの国家賠償請求を認めた最高裁判決についての会長談話

本日(2007年11月1日)、最高裁判所は、在外被爆者を被爆者援護法の対象ではないとした国の通達(昭和49年7月22日衛発第402号各都道府県知事並びに広島市長及び長崎市長あて厚生省公衆衛生局長通達)及びこれに従った取扱いは違法であったとして国家賠償を求めた裁判で、国の上告を棄却する判決を下し、在外被爆者である韓国人の元徴用工らの国家賠償請求を認容する原判決の結論を維持した。


本判決は、被爆者健康手帳の交付を受けて各種手当の受給権者となっていても、日本から出国すれば受給権を失うとする上記通達及びこれに従った取扱いは、「被爆者が日本国内に居住地を有すること」を要件としていない原爆二法及びこれを引き継いだといえる被爆者援護法の解釈として誤りで違法であったこと、さらに、このような解釈運用を行った行政担当者に、国家賠償法上の過失が存在したことを認めた初めての最高裁判決である。


上記通達は、2003年3月に変更され、渡日して被爆者健康手帳の交付を受け健康管理手当等の受給権を取得した在外被爆者が日本を出国したとしても、被爆者たる法的地位や手当等の受給権を失わないように改められている。


しかしながら、現在も、被爆者健康手帳の交付を受けるためには来日して申請をする必要があるとの政策は変更されておらず、今なお、高齢化や健康的な理由により渡日が困難である在外被爆者らが被爆者健康手帳の交付を受けることができていない。


当連合会は、2005年7月14日の「在外被爆者問題に関する意見書」において、「国籍や居住地如何に関わらず、被爆者であるならば等しくその救済をはかるべきである」として、日本政府に対し、健康管理手当等の申請及びその前提となる被爆者健康手帳の交付申請について、国外の居住地からの申請を認めるべきであるとの意見を述べているところである。


当連合会は、政府及び国会に対し、本判決を契機として、速やかに、被爆者健康手帳の交付について、国外の居住地からの申請を認めるよう改め、そのことを明確にするべく法改正を行うことをはじめ、全ての在外被爆者に等しく援護施策を実施することを改めて求めるものである。


2007年(平成19年)11月1日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛