富山県氷見市における強姦・同未遂事件再審無罪判決についての日弁連コメント
2007年10月10日
日本弁護士連合会
2002年(平成14年)1月及び同年3月に富山県氷見市で発生した強姦・同未遂事件の被告人とされ、同事件で有罪判決(確定)を受けた柳原浩氏に対し、富山地方裁判所高岡支部は、本日、同事件の再審事件において無罪判決を言い渡した。
柳原氏は、2002年(平成14年)4月、本件の被疑者として警察の任意の取調べを受けた際、警察官が、家族が見放しているなどの虚偽の事実を告げ、実母の写真を見せるなど心理的圧迫を加えて自白を迫るなどの不当な取調べを行った結果、自ら犯人であることを認める虚偽の自白に追い込まれた。これにより、同氏は逮捕され、裁判所の勾留質問においていったんは被疑事実を否認したものの、その後の取調べにおいても、警察官から恫喝されて再び虚偽の自白に転じ、以後、捜査官から誘導されるままに虚偽の自白を継続した。その結果、同氏は、同年11月7日、同支部において懲役3年の実刑判決の言渡しを受け、約2年2か月もの長期にわたり刑務所に服役を余儀なくされた。
ところが、2006年(平成18年)11月、たまたま真犯人が本件犯行を自認したことから柳原氏の無実が明らかとなり、同支部は、2007年(平成19年)4月12日、本件について再審開始を決定し、本日の無罪判決に至ったものであるが、この間、同氏が被った有形無形の被害は誠に甚大であり、筆舌に尽くし難いものといわなければならない。
本件においては、警察官が柳原氏を犯人と決めつけ、同氏を威迫・恫喝して虚偽の自白を強要しており、かかる違法捜査を抑止するためには、身体拘束をされているか否かを問わず、取調べの全過程を録画・録音する全面的な可視化制度を一刻も早く導入しなければならない。現在、検察庁において一部の事件について試行されているような、取調べの最終段階のみを録画・録音することでは、本件のような違法捜査・虚偽自白を防ぐについて何らの解決策ともならないことは明らかである。
裁判員制度の開始も1年半後に迫った今、再びかかる冤罪を引き起こさないため、また、自白の任意性をめぐる審理によって裁判の長期化を防止するため、当連合会は、取調べの全過程の可視化をし、これを欠くときは、証拠能力を否定する旨を定めた法律を直ちに整備することを求めて、全力を挙げて取り組んでいく決意である。
以上