カネミ油症事件仮払金債権の免除に関する特例法の成立に当たっての会長談話

本日、カネミ油症事件関係仮払金返還債権の免除についての特例に関する法律(以下「特例法」という。)が成立した。


特例法では、早期に仮払金債権の免除を行うため、債権管理法の特例を定めた上、免除の基準を税引後の手取額で1世帯当たり年収1000万円未満とすることにより、大多数の被害者を救済することが予定されている。また、与党は、カネミ油症事件の被害者救済案において、原因物質であるダイオキシンの調査研究に対する協力金という名目ではあるものの、実質的な給付金を支給する方策を発表している。


これらのカネミ油症事件の被害者救済策は、当連合会が、2006年4月17日、国として、立法措置も含め、被害者に対する仮払金債権を一律に全額免除する措置を採ること、医療費、医療関連費及び生活補償費の支給を行うこと等の方策を採るよう勧告したことにも沿うもので、評価することができる。


ただし、カネミ油症事件の被害者が、39年前の事件発生以来、今なお深刻な健康被害を被っていることに加えて、自費で医療を受けざるを得ない状況にあることや、国が、事件発生後も被害回復のために必要な措置を講じてこなかった経過等に鑑みれば、前記の協力金の金額は、被害者を救済する措置として十分なものでなければならない。また、前記の免除の基準を適用するに当たっては、被害者の置かれている実情に十分に配慮した解釈・運用がなされるべきである。


当連合会は、今後も、全てのカネミ油症事件の被害者の抜本的な救済のため、国が主体となった、カネミ油症の認定手続の確立、カネミ油症の治療方法の研究・開発の推進、専門的知見のある医師等の養成、受診しやすい専門的医療機関の整備、各医療機関に対するカネミ油症の理解及びその治療方法の周知など、前記の勧告で指摘したすべての方策を国において速やかに採るよう求めていく所存である。


2007年(平成19年)6月1日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛