少年法「改正」法成立にあたっての会長声明

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本日、少年法「改正」法が参議院で可決成立した。


今回の政府提出法案については、提案理由とされている少年事件の低年齢化・凶悪化という事実の検証は十分にはなされておらず、少年に対する警察の調査権限の導入・強化や少年院送致年齢の下限の撤廃など大きな問題があり、当連合会は2年以上にわたり、法案の問題点の解消を強く求めてきた。


多くの市民や当連合会の意見を受けて、法案は大幅に修正され、ぐ犯少年に対する警察官の調査権限が削除されたほか、触法少年に対する警察官の調査に対しては弁護士付添人の選任権が明記され、少年の情操の保護に配慮し、質問にあたっては強制にわたることがあってはならない旨の規定が定められた。また、国選付添人選任の効力が少年の釈放後においても最終審判まで維持されるようになった。今国会においてこのような大幅な修正が行われたことは、率直に評価されなければならない。


しかし、成立した「改正」法では、警察による少年の調査への弁護士の立会いやビデオ録画化を定めておらず、少年が警察によって虚偽自白をとられ冤罪につながるおそれは強く存在する。


また、重大事件をおこした11歳の小学生が少年院に収容される可能性があるが、このような少年ほど、被虐待体験などの過酷な生育歴を有している場合が多く、児童自立支援施設等での福祉的対応に委ねるべきである。


当連合会は、今後も、国選付添人対象事件のさらなる拡大を求めるとともに、付添人活動を通じて、今回の「改正」法の運用を注視し、少年法や子どもの権利条約の理念に添って更なる改正を求めるなど、少年の最善の利益を実現する法制度確立の取り組みを強化する決意である。


2007年(平成19年)5月25日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛