死刑執行に関する会長声明

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本日、東京拘置所において1名、大阪拘置所において1名、福岡拘置所において1名の死刑確定者に対して死刑が執行された。


日本弁護士連合会は、死刑制度の存廃について国民的な議論が尽くされるまで死刑の執行を停止するよう、これまで再三にわたって法務省に対し要請してきたが、昨年12月には4名の死刑確定者に対して死刑が執行されており、今回の死刑執行とあわせて約4ヶ月の間に合計7名に対し死刑が執行されたものであって、誠に遺憾である。


死刑については、死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効)、1997年4月以降毎年、国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけを行った。このような状況のもとで、死刑廃止国は着実に増加し、1990年当時の死刑存置国96か国、死刑廃止国80か国(法律で廃止している国と過去10年以上執行していない事実上の廃止国を含む。)に対し、2006年11月21日現在、死刑存置国68か国、死刑廃止国129か国と、死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。


またわが国では、4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について再審無罪判決が確定し、死刑判決にも誤判が存在したことが明らかとなっており、このような誤判を生じるに至った制度上、運用上の問題点について、抜本的な改善が図られておらず、誤判の危険性は依然不可避である。また、死刑と無期の量刑について明確な判断基準が存在せず、量刑判断についての問題点が指摘されているなか、近時、重罰化の傾向が顕著であり、全国の裁判所で昨年1年間に死刑判決が言い渡された数は44人に上り、最高裁の記録で確認できる1980年以降では最多となった。このような重罰化のなかで、死刑確定者の数は100名を超えており、大量の死刑執行が危惧されているなか、今回の執行がなされたものである。


当連合会は、2002年11月「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱した。


当連合会は、政府に対し、死刑制度に関する情報を広く公開することを要請するとともに、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、改めて強く要請するものである。


2007年(平成19年)4月27日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛