政府の「多重債務問題改善プログラム」策定に関する会長談話

政府の多重債務者対策本部(本部長山本有二金融担当大臣)は、本日、200万人を超えるとされる多重債務者の救済・支援などの多重債務対策について「多重債務問題改善プログラム」を策定した。昨年12月に成立した改正貸金業法は付則のなかで政府の責務として多重債務対策を求め、同本部及びそのもとに設置された有識者会議で精力的な検討が行われていた。


同プログラムでは、今後の多重債務者の発生を防止する仕組みは法改正による貸し手への規制強化によることとし、現在、200万人を超えている既存の借り手などを対象とした「借り手対策」が必要として、


  1. 丁寧に事情を聞いてアドバイスを行う相談窓口の整備・強化
  2. 借りられなくなった人に対する顔の見えるセーフティネット貸し付けの提供
  3. 多重債務者予防のための金融経済教育の強化
  4. ヤミ金の撲滅に向けた取り締まりの強化

を国・自治体及び関係者が一体となって実行すること、各省庁が直ちに取り組むこと、各年度において各施策等の進捗状況をフォローアップすること等を定めた。


プログラムの中心は、「丁寧に事情を聞いてアドバイスを行う相談窓口の整備」であるが、「相談窓口にアクセスできているのは多重債務者の2割で、残りの8割の掘り起こし(発見)・問題解決が重要」との基本認識のもと、「遅くとも、改正貸金業法完全施行時(2009年末)には、どこの市町村に行っても適切な対応が行われる状態を実現する」とされ、さらに多重債務対策の充実のため、都道府県に県庁の関係部署、警察、弁護士会、司法書士会及び多重債務者支援団体(被害者の会)による「多重債務者対策本部(協議会)」を設置することを求めている。


また、セーフティネット貸し付けの提供では「顔の見える融資制度を行う」等、経済金融教育の強化では「すべての生徒が、具体的な事例を用いて、借金をした場合の金利や返済額、上限金利制度、多重債務状態からの救済策(債務整理などの制度や相談窓口)等の知識を得ること」が謳われ、「高校の家庭科の学習指導要領において、多重債務問題について取り扱うことを検討すべき」としている。ヤミ金の撲滅についても取り締まりの強化だけでなく警察によるヤミ金融に対する警告や携帯電話不正利用停止制度の積極的活用、平易なマニュアルを現場の警察官に配布・周知すべきことなどを定めている。


本プログラムは、今後、日本の多重債務対策の基本となるものであるところ、多重債務対策は一刻の猶予もならず、プログラムの前倒しでの実行が求められているというべきであるが、総じて、本プログラムは多重債務者の救済策として高く評価すべき内容となっている。


当連合会は、昨年、貸金業制度の抜本改正のため金利規制などの強化を求め、会を挙げた立法運動を行ってきたが、今後とも、相談体制の充実など、200万人を超える多重債務者の救済や多重債務問題の解決、さらに、多重債務問題の背景にある日本の貧困問題解決のため、政府、関係団体と緊密な連携のもとに、全力を傾けることを、ここに表明する。


2007年(平成19年)4月20日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛