日本政府の国際刑事裁判所規程への加入方針を歓迎し、同裁判所の活動への積極的な貢献を求める声明

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政府は、本年2月27日、国際刑事裁判所規程(いわゆるローマ規程)へ加入すること閣議決定した。


当連合会は、この閣議決定を歓迎するとともに、今国会において同規程承認案及び関係する法案が速やかに議決され、同規程へのわが国の加入が実現することを望むものである。


国際刑事裁判所は、ジェノサイド罪、人道に対する罪そして戦争犯罪を行った個人を、同裁判所に設置される独立の検察官が訴追し、同じく独立の裁判官が国際的に確立した刑事手続きに基づいて裁くことを目的とする、常設かつ独立の裁判所である。日本政府は、同裁判所規程が採択された1998年のローマ全権外交会議において、その採択を支持しながら、今日まで同規程への署名・批准、あるいは加入をしてこなかった。


当連合会は、「→国際刑事裁判所への日本の積極的参加を求める決議」(2002年6月21日)において、政府に対し、同規程に直ちに加入し、すでに国際社会で進められている国際刑事裁判所の設立を含む国際刑事司法制度の確立のために積極的に参加するべきであると訴えてきた。これは、いまなお武力紛争や民族紛争のもとで重大な人権侵害がくり返されている状況において、国際刑事裁判所がそれらに有効に対処する新たな国際的システムとしてその役割が期待されていること、ジェノサイド等の国際犯罪に対しては、国際法廷における厳正な法の支配をもって臨むべきであること、を理由とするものであった。


当連合会はさらに、国際刑事裁判所における弁護人及び被害者代理人の地位の確立とその活動の独立を国際的に保障するために、2002年に設立された国際刑事弁護士会(ICB)の中心的なメンバーとして活動してきた。


日本は、国際刑事裁判所規程の加入によって、同裁判所の最大の分担金拠出国となる可能性があるが、これを同裁判所に対して全般的な貢献を行う機会としてとらえるべきである。すなわち、同裁判所では付託された事案の審理が進み、業務が拡大し、法律実務家をはじめとする多数の人材を必要としている。わが国は、そのような場に多くの日本の法律実務家その他の専門家が参加していくための環境を整備すべきである。


同裁判所で実現されている被疑者・被告人の人権を保障する措置は、取調べ過程への弁護人の立ち会いや録画・録音をはじめ、国際水準に沿うものである。日本は、そのような刑事司法制度の国際的な水準を自国内で実現することにより、国際刑事裁判所に協力すべき国内の制度を実現・発展させていくべきである。


当連合会は、同規程への加入後に日本が行うべき積極的な貢献について、法律専門家団体の立場からできる限りの協力を惜しまない。


2007年(平成19年)2月27日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛