カネミ油症事件仮払金債権の免除についての特例法案骨子に関する会長声明
与党カネミ油症問題対策プロジェクトチームは、2006年11月28日、「カネミ油症事件関係仮払金返還債権の免除についての特例に関する法律案(仮称)骨子(素案)」(以下「特例法案骨子」という。)を発表した。新聞報道によれば、今臨時国会に法案を提出し、早期の成立を目指す方針であると伝えられている。
当連合会は、カネミ油症事件の被害者からの申立てを受け、2006年4月17日、国として、立法措置も含め、被害者に対する仮払金債権を一律に全額免除する措置を採るとともに、国が主体となったカネミ油症の認定手続の確立、国が主体となったカネミ油症の治療方法の研究・開発の推進、専門的知見のある医師等の養成、受診しやすい専門的医療機関の整備、各医療機関に対するカネミ油症の理解及びその治療方法の周知並びに医療費、医療関連費及び生活補償費の支給等の方策を採るよう勧告し、その内容の実現のために取り組んできた。
特例法案骨子は、カネミ油症事件による被害の発生から今日まで被害者が置かれてきた状況や、被害者の多くが高齢となっていることを踏まえ、早期に仮払金債権の免除を行うことの緊要性に鑑み、国の債権の管理等に関する法律(以下「債権管理法」という。)の特例を定めようとするものであって、仮払金債権の対象となっている被害者を立法措置によって速やかに救済しようという趣旨は高く評価できる。
しかし、特例法案骨子では、仮払金債権の免除を可能とする要件に関し、被害者が、無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、弁済の見込みがないことが必要であるとされており、この点については、現行の債権管理法の規定と変わりはない。そのため、特例法案骨子でも述べられているとおり、被害者の置かれている状況に十分に配慮した柔軟な運用がなされない限り、一部の被害者のみが早期の免除を受け得るに止まることになり、被害者全体の救済にはならない。また、被害者が死亡した場合であっても、相続人に対する仮払金債権が免除されるものとはされていない。したがって、特例法案骨子の内容は、仮払金債権の対象となっている被害者を救済する措置として、未だ不十分である。
当連合会は、カネミ油症事件の被害者が、今なお、深刻な健康被害を被っていることに加えて、自費で医療を受けざるを得ない状況にあることや、国が、事件発生後も被害回復のために必要な措置を講じてこなかった経過等に鑑み、仮払金債権を一律に全額免除する早期の立法措置をあらためて強く要請するものである。併せて、被害者全体の抜本的な救済のため、国において、当連合会が前記の勧告で指摘したすべての方策を速やかに採るよう求めるものである。
2006年(平成18年)12月8日
日本弁護士連合会
会長 平山 正剛