「防衛庁設置法等の一部を改正する法律案」に関する会長声明
第164回国会に上程され、継続審議となっていた「防衛庁設置法等の一部を改正する法律案」(以下「本法案」という。)は、現在、今国会における重要法案として審議が行われている。
本法案は、防衛庁設置法を一部改正し、防衛庁を「防衛省」に昇格させるとともに、自衛隊法を一部改正し、内閣府の長としての内閣総理大臣の権限を新たに主任の大臣となる防衛大臣に移行させるほか、従来、「付随的な任務」とされてきた自衛隊の海外活動などを「本来任務」として位置付けることなどを内容とする。
本法案により、防衛大臣は、閣議請議、予算の要求・執行、米軍に対する物品の提供などを直接行うことができるようになり、自衛隊を所管する行政組織の権限が拡大・強化されることになる。また、テロ特措法やイラク特措法に基づく活動、周辺事態における後方地域支援等の自衛隊法第8章の「雑則」及び「附則」に規定されていた自衛隊の活動が、国土の防衛とともに、同法3条2項に規定する「本来任務」として位置付けられることになる。
当連合会は、2001年10月12日に発表したテロ特措法案に関する会長声明において、国会に対し、なし崩し的な解釈改憲の弊をおかすことのないよう求めるとともに、2002年12月16日に発表した会長声明においては、同法を根拠とするインド洋へのイージス艦の派遣に強く反対した。また、2003年7月4日にイラク特措法案に反対する会長声明を発表して以来、自衛隊のイラクへの派遣や派遣延長に反対する理事会決議や会長声明を重ねて発表している。これらの理事会決議や会長声明は、テロ特措法やイラク特措法に基づく自衛隊の海外活動が、国際紛争を解決するための武力行使及び他国領土における武力行使を禁じた憲法9条に反するおそれがあることを理由とするものである。
また、当連合会は、2002年3月15日以降に発表したいわゆる有事法制に関する一連の理事会決議や会長声明において、周辺事態法と連動した自衛隊の活動が、憲法の禁止する集団的自衛権の行使となる危険があることを指摘してきた。
本法案は、このようなテロ特措法やイラク特措法に基づく活動、周辺事態における後方地域支援等の自衛隊の活動を「本来任務」と位置付けるのみならず、自衛隊をこれらの活動に積極的・主体的に参加させる体制を整備しようとするものであって、憲法上の重大な疑義を含むものといわざるを得ない。
当連合会は、本法案が以上のような重大な問題点を有するにもかかわらず、現時点で必ずしも十分な審議がなされていないことに懸念を表明し、国会において徹底した審議を尽くすよう強く求めるとともに、自衛隊の海外活動の「本来任務」化には反対であることを重ねて表明するものである。
2006年(平成18年)12月1日
日本弁護士連合会
会長 平山 正剛