中国残留孤児国家賠償請求訴訟神戸地裁判決に対する会長談話

本日、神戸地方裁判所は、いわゆる中国残留孤児兵庫県訴訟において、厚生労働大臣の自立支援義務の懈怠を違法として、61名の原告に対する損害賠償を国に命じる判決を言い渡した。


当連合会は、1984年の人権擁護大会で、「中国残留邦人の帰還に関する決議」を採択し、中国残留孤児(以下単に「残留孤児」という)を含む中国残留邦人の日本国籍取得手続を速やかに整備して早期帰還を実現することや、自立を促進する特別の生活保障をするなどの特別立法を含む諸措置を速やかに講ずることを求めた。また、2004年3月には、当連合会に対してなされた人権救済申立を受けて、国に対して、帰国促進策等の徹底や戸籍回復・国籍取得手続の改善のほか、生活保護によらない特別の生活保障給付金制度の創設や日本国民が受給する平均金額以上の年金が受給可能となる所要の立法措置などを講ずることを勧告していた。


全国では約2500名の帰国した残留孤児が生活しているところ、2002年12月の東京地方裁判所への提訴を皮切りに、既に全国15の地方裁判所に、総数2000名を越える残留孤児が本件と同様の訴訟を提起している。


本日の判決は、政府が、残留孤児の帰国を合理的な根拠なしに制限したこと、残留孤児に対して永住帰国後5年間、日本語習得、就職活動、職業訓練に向けた支援を行い、これらに取り組むことができるような生活保持に向けた支援を行う法的義務があるのにこれを怠ったことを違法と評価したうえで、国の損害賠償責任を認めたものであり、残留孤児に対する支援に大きな一歩を踏み出す画期的なものとして歓迎する。


当連合会は、本日の判決を高く評価するとともに、政府及び国会がこれを重く受け止め、その責任において、残留孤児の老後の生活保障など支援施策の抜本的な見直しや立法措置を行うなどの施策を直ちに実現することを再度強く求めるものである。


2006年(平成18年)12月1日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛