「貸金業法の抜本改正の骨子」に関する会長談話
貸金業制度・出資法の上限金利の見直しを検討していた自由民主党は、本日の政務調査会において、同党金融制度調査会等合同会議が取りまとめた「貸金業法の抜本改正の骨子」を承認した。同骨子では、貸金業の適正化、過剰貸付の抑制、多重債務者対策本部の設置等、規制強化、多重債務問題対策の方向が示されたこと自体は一定の評価ができる。
しかし、金利体系の見直しでは、グレーゾーンの廃止時期が金融庁案の公布後9年から5年に短縮されたものの、5年のうち最後の2年間が高金利の許容される特例期間として認められたこと、利息制限法の金額刻みが変更されたことは極めて遺憾である。そのうち、利息制限法の制限利率は現行通りとされたが、金額刻みは物価上昇に合わせ、貸付元本額が50万円未満の場合は年20%、50万円以上500万円未満の場合は年18%、500万円以上の場合は15%と変更された。その結果、貸付元本額が10万円以上50万円未満の貸付では現行18%から20%に、100万円以上500万円未満の貸付では現行15%から18%に切り上げられることになった。利息制限法が制定された1954年の銀行平均貸付金利は年9%であり、現在が年1.6%であることからすれば、利息制限法の制限利率自体も高すぎると言うべきで、金額刻みを変更することの合理性は全くない。現在の消費者金融の1社当たりの平均利用額が約40万円であること、商工ローン、不動産担保ローンからの借入が100万円以上500万円程度であることからすると、多くの利用者の負担増となることから利用者に直結する改悪と言わざるを得ない。
そもそも、今回の改正は多重債務問題解決のため出資法の上限金利を利息制限法まで引き下げることにあったはずであり、本末転倒と言うべきである。
当連合会は、本年9月5日付「特例金利に反対する緊急会長声明」で宣言した通り、一切の特例を設けることに反対するとともに、今回の利息制限法の金額刻みの変更にも強く反対し、各界各層との広範な協力のもと、正しい立法運動を継続するものである。
2006年(平成18年)9月19日
日本弁護士連合会
会長 平山 正剛