弁護士求人アンケートの分析結果および対策についての日弁連コメント

2006年8月23日


日本弁護士連合会


  1. この度、当連合会として初の試みである弁護士求人アンケートを実施し、ここにその分析結果を公表します。
  2. 弁護士会は、司法修習における実務修習等の活動を担い、法科大学院においては約1000人の実務家教員を送りだし、これまで法曹養成に貢献してきました。後進の養成は弁護士会の根幹にかかわることであり、重大な責務と認識しております。また、弁護士事務所への就職を志望する司法修習終了者が、しっかりと弁護士事務所でオン・ザ・ジョブ・トレーニングを積むことが大事です。
  3. 本年度(59期)は、求人数からの予測からは、約1200人強の弁護士事務所への就職志望者が、ほぼ就職を果たせるのではないかと分析しています。
    来年度(60期)は、現60期司法修習生と法科大学院出身者で新司法試験合格者である新60期司法修習生の修習終了者は、本年度と比較して合計約1000人増加すると推測されます。アンケートによって、求人に関する有用な情報を入手できましたが、現段階では未だ多数の弁護士事務所が60期の採用計画を決めていないことや、採用予測をする上で数多くの考慮すべき要素があることから、現時点において確度の高い求人数の予測はできませんでした。しかしながら、現時点においては、弁護士事務所就職希望者数より求人数の方が下回っている可能性が大きいと考えます。
  4. 当連合会・弁護士会は、業務基盤を確立し安定した求人数を確保するために、今後採用促進に向けて次のとおりの対策を講じます。
    第1は、求人情報について、当連合会と弁護士会とが有機的に接続された効果的なシステム化を図り、ことに本アンケートで得られた情報も掲載して、修習生の求職情報にマッチするように工夫します。
    第2は、できるだけ多くの弁護士会または弁護士会連合会で就職説明会を効果的に開催し、多くの事務所の参加を呼びかけ、直接面談できる機会を拡げる工夫をします。
    第3は、弁護士の大都市偏在に対処するため、中小規模会には、採用倍増運動等を要請し、さらに、採用促進を図るために、独立開業支援や新人弁護士のサポートなどの態勢を弁護士会として敷いてもらうよう、強力に働きかけます。
    第4は、勤務弁護士採用によるメリットを訴え、採用意欲を高める運動をします。ことに総事務所数の70%を占める1人事務所の採用動向が重要であり、採用促進に向けた取り組みを強力に進めます。また弁護士事務所承継も併せて重要なテーマとして採りあげます。
    その他、弁護士協同組合と連携して開業や事務所移転資金の貸付制度の充実も検討しております。
  5. 当連合会・弁護士会としては、以上のような対策を講じますが、司法研修所や各地の法科大学院に対しても採用促進への協力を要請し、また最高裁判所・法務省に対して、裁判官不足、検察官不足解消の必要性の観点からも、任官者の増員を訴えていきます。また、企業・行政機関等に雇用される弁護士の増大も重要な課題です。
    このように、司法全体の容量の拡充に向けての取り組みを継続していくことがこれまで以上に求められると認識しています。
  6. 2008年度以降も、修習終了者は増加を続け、2011年頃には修習終了者3000名に達し、求人確保の課題は継続します。弁護士事務所における新人採用の潜在能力を引き出し、また4項及び5項の対策を講じ、そしてそれを継続することにより、求人確保に取り組みたいと考えております。
    本年度の実績や2007年度の内定状況を見据えて、2008年度以降の対策を検討します。
  7. 当連合会は、本年6月、弁護士業務総合推進センターを創設し、その中に弁護士就職問題、弁護士の大都市偏在・過疎問題、弁護士情報提供・紹介制度、法的ニーズ・法曹人口調査検討などの課題に対して10を超えるプロジェクトチームを設置し、弁護士業務の推進・拡充に向けて一丸となって取り組んでおります。
    今次の司法改革の実現は、新規法曹の大幅増加という司法の人的基盤の拡充がベースであり、出発点となっています。
    当連合会は、弁護士の大幅増員に呼応して、法的ニーズの掘り起こしを図り、法化社会の実現に向けての第一歩を踏み出したところです。今後、企業や行政機関にも法曹需要や法的ニーズの調査や採用促進の要請を行ってまいります。日本司法支援センター開業によって喚起されるであろう需要への取り組みについても、一丸となって取り組んでまいります。
    当連合会・弁護士会は法の支配の一層の拡充と司法アクセスの一層の改善を達成するためにも、今こそ全会挙げて弁護士業務推進のための様々な活動を展開してまいる所存です。