原爆症認定訴訟広島地裁判決についての会長談話
本日、広島地方裁判所は、原爆症認定申請を厚生労働大臣が却下したのは不当として処分取消などを求めた訴訟(原爆症認定訴訟)で、41名の原告ら全てについて、厚生労働大臣の認定却下処分を取り消す判決を言い渡した。
本判決は、本年5月12日に言い渡された大阪地方裁判所の原告勝訴判決に続き、厚生労働大臣が、「原爆症認定に関する審査の方針」(「審査の方針」)に依り認定申請を却下した処分を取り消したものであり、全国15の裁判所に係属している原爆症認定訴訟にも大きな影響を与える判決と考えられる。
本判決は、統計的に原爆放射線が病気の原因となった確率を計算した「原因確率」には残留放射線による外部被曝及び内部被曝を十分には検討していないなどの限界や弱点があるから、原爆症を認定するにあたっては、原因確率に重きを置く「審査の方針」を一応の参考資料として評価するのにとどめ、被爆状況、被爆後の行動、急性症状などやその後の生活状況等を全体的、総合的に考慮すべきであるとしている。
当連合会は、1975(昭和50)年から国内の被爆者援護に関する調査研究を開始し、これまで4度にわたる調査報告書を公表して国の認定基準が実情に合っておらず援護を必要とする被爆者が救済されていないことを指摘し、改善を求めてきた。在外被爆者に関しても1986(昭和61)年から調査研究を開始して、昨年まで3度にわたり意見書等を公表し、本年4月には「在外被爆者問題を考える」と題するシンポジウムを広島市で開催するなど、国家補償の性格を有する被爆者援護法の趣旨に沿って国内外の被爆者援護を充実させるよう一貫して求めてきた。
本判決は、当連合会がこれまで求めてきた被爆者援護のあるべき内容に沿うものである。
来る8月6日には、広島に原爆が投下されて61年目を迎える。高齢化した被爆者の早期救済が求められており、当連合会は、国に対し、原爆が投下された広島の地で出された本判決を契機に、原爆症認定行政を含めた被爆者援護行政のあり方の抜本的転換をすみやかに行うよう要望するものである。
2006年(平成18年)8月4日
日本弁護士連合会
会長 平山 正剛