「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」に対する会長声明

出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)の上限金利及び貸金業制度の見直しを検討してきた自由民主党及び公明党は、今月6日、共同で「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」をまとめた。同考え方では、多重債務問題の深刻化を踏まえ、貸金業の適正化、過剰貸付の抑制及び金利体系の適正化等全体的な規制強化の方向を打ち出し、最重要課題である金利体系について、グレーゾーン金利の廃止と原則として出資法の上限金利を利息制限法の水準まで引き下げること、少額短期等の特例の是非などについては今後の検討課題とするとともに、低所得者世帯に対して行っている緊急小口貸付や中小零細事業者に対するいわゆるセーフティーネットの拡充・強化の方向も打ち出した。


当連合会は、深刻な多重債務問題の解決のためには出資法の上限金利を利息制限法まで引き下げることが極めて重要であると繰り返し主張してきたが、与党が、一連の最高裁判決及び金融庁・貸金業制度等に関する懇談会の中間整理を尊重して、規制強化の方向やセーフティーネットの充実、とりわけ出資法の上限金利を利息制限法の水準まで引き下げることと日賦貸金業の特例廃止の方向を打ち出したことを高く評価するものである。


しかし、同考え方において検討課題とされている少額短期貸付等の特例は金利の適正化の方向を骨抜きにする大きな危険性をはらんでいる。特例の設置要求は貸金業界の意向に沿ったものと考えられるところ、今後、貸金業界の猛烈な巻き返しで特例金利が採用されかねない極めて危険な状況にあるといえる。


また、同考え方には考慮すべき点として、利息制限法の制限金利の金額刻みの見直しや、利息制限法を20%に一本化すること等が盛り込まれている。しかし,利息制限法が制定された1954年における銀行の平均貸出金利が年9%であったことを踏まえ、同法は、10万円未満年20%、10万円以上100万円未満年18%、100万円以上年15%の制限金利を定めたのであり、現在、銀行の平均貸出金利が年2%を割っていること、消費者金融利用者は1社あたりの平均借入額が39万8000円であることを考え合わせると、「物価変動を考慮して金額刻みを引き上げる」、「20%へ一本化」という形でも利息制限法の引き上げを認めることは断じて容認できない。


当連合会は、例外を設けることなく出資法の上限金利を利息制限法の制限金利年15~20%まで引き下げることをあらためて求めるものである。


2006年(平成18年) 7月12日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛