「更生保護のあり方を考える有識者会議」報告書に対するコメント
2006年6月27日
日本弁護士連合会
6月27日、「更生保護のあり方を考える有識者会議」が法務大臣に対して最終提言(以下「提言」という。)を提出した。
提言は、更生保護が、罪や非行を犯した人たちの立ち直りを助け、再び地域社会での共生をはかるという極めて重要な役割を担っているにもかかわらず、極端に貧困な人的物的環境下に置かれ続け、冷遇されてきた事実を直視し、更生保護の抜本的な充実強化を図ろうとするものであり、その基本的姿勢は評価でき、具体的な提言にも賛同できるものが多い。特に、保護観察官を少なくとも倍増し、新たな採用・育成制度を導入すること、「自立更生促進センター」構想やそれと連動する保護司・更生保護施設への援助の拡大等については、早急に実現に向け動き出すべきである。また、更生保護行政の透明性を高めるための第三者機関は、いまだその具体的内容が明らかではないものの、内実のある機関の設置が期待される。
しかし、提言が「再犯防止による社会の保護」を強調している点については、ともすれば更生保護制度の監視機能や地域社会からの排除を行う機能ばかりを肥大化させ、対象者の改善更生を助け社会復帰を促進するという更生保護の根幹を崩してしまうのではないか、との危惧を抱く。提言が指摘するように、仮釈放の運用はメリハリをつけて行うべきではあるが、仮釈放の判断が厳しくなる対象者は、改善更生に向けて量的・質的により密度の高い指導・援助を必要とする人であるといえる。再犯防止を強調するあまり、これらの人が社会内処遇の機会を奪われることのないよう、引き続き、必要的仮釈放制度の導入検討を続けるとともに、矯正分野との連携を高め、施設内処遇もあわせて充実強化が図られるべきである。また、仮釈放手続における被害者意見の取扱いについては、提言も指摘しているとおり、検討が必要である。
執行猶予者保護観察制度の運用改善に関し、裁判所・検察庁・保護観察所と弁護士会との連絡協議会の開催が提言されており、当連合会は、これについて積極的に参加するとともに、これにとどまらず、今後も、更生保護分野全般における改革に向けた取り組みを強めていく所存である。
以上