薬害肝炎訴訟大阪地裁判決についての会長談話
本日、大阪地方裁判所において、全国5地裁(仙台、東京、名古屋、大阪、福岡)に係属している「薬害肝炎訴訟」の初めての判決が下された。
本日の判決は、厚生大臣(当時)の行為の違法性について、血液製剤であるフィブリノゲン製剤の1987(昭和62)年の製造承認につき、「厚生大臣は、より一層の慎重な調査、検討をするどころか、非加熱製剤を加熱製剤に切り替えさせるという方針を立て、あらかじめ申請及び承認時期を定めた上で、極めて短期間に、いわば結論ありきの製造承認を行ったものであるから、安全確保に対する意識や配慮に著しく欠けていたといわなければならない」などと指摘して、原告5人の国に対する損害賠償請求を認容した。
当連合会は、サリドマイド、スモン、薬害エイズなど、わが国において間断なく続く医薬品による被害の発生をふまえ、医薬品の安全に関する行政に対して繰り返し意見を表明してきており、1998(平成10)年の第41回人権擁護大会においては、「医薬品被害の防止と被害者救済のための制度の確立を求める決議」を採択したところである。
同決議においては、国が、医薬品安全性確保義務を怠り、市場に出回った医薬品の危険性に関する情報を軽視してきたことなど、国による医薬品被害防止システムに構造的な欠陥が存在することを指摘したうえ、医薬品の安全性・有用性に関する情報を知る権利を具体化させるためのシステムを整備することなどを提言している。
本日の判決は、国がフィブリノゲン製剤の危険性に関する情報を軽視した結果、原告らが「何らの落ち度がないにもかかわらず、C型肝炎ウイルスに感染し、その結果、深刻な被害を受けるに至った」ことを認めるとともに、治療を受けることの困難性や、社会の理解が不十分であることによる不利益を被っていることをも指摘している。
当連合会は、本日の判決を契機として、国が、上記の当連合会の提言を実現するよう改めて強く求めるとともに、より広く被害者が救済されるような施策を速やかに実施するよう要望するものである。
2006年(平成18年)6月21日
日本弁護士連合会
会長 平山 正剛