ドミニカ日本人移民訴訟東京地裁判決についての会長談話

本日、東京地方裁判所は、1950年代にドミニカ共和国に日本から移住した方々が提訴した国家賠償請求事件につき、請求を棄却する判決を言い渡した。


ドミニカ共和国に移民した日本人は、かつて、日本政府が「カリブ海の楽園」で大農場経営ができるなどと宣伝し推奨した移民に応募したものであるが、実現された条件は、政府が行った宣伝内容とは大きく異なり、政府が宣伝していた土地は与えられず、与えられたものも多くは農耕に適さない土地であり、さらに、灌漑設備や電気も乏しいなど劣悪な社会環境の中での生活を余儀なくされた。


当連合会は、ドミニカ日本人移民問題について、移住者らからの人権救済の申立を受け、現地に委員を派遣するなどして調査をし、貧窮、非文化的環境、教育制度・医療体制の不備などの被害状況は筆舌に尽くしがたいものであることなどを認定した。そして、1994(平成6)年3月、内閣総理大臣、外務大臣等に対し、移民募集時に示された条件と現実との差異を解消する外交努力をすること、移住者の財産的損害、精神的苦痛に対し賠償措置を取ること、資金融資など移住者が自立するために必要な施策をとることの3点を要望している。


しかし、その後の政府が行った対応、施策も、移住者の被害を回復するものとは到底言えない甚だ不十分なものであるとして、2000(平成12)年、移住者が国家賠償訴訟を提起していた。


本日の東京地裁判決は、除斥期間経過を理由に移住者の請求は棄却したものの、日本政府担当者や担当大臣の法的義務違反により「物心両面にわたって幾多の辛苦を重ねることを余儀なくされた」として国家賠償法上の損害賠償請求権の発生は明確に認定している。


小泉首相も、2004(平成16)年3月10日、国会で、「外務省として多々反省すべきことがあった」とし、「今後、このような不手際を認め、移住者に対してどのような対応ができるか。また、ドミニカとの間にどのような友好関係を維持発展させていくことができるか。そういう中でしかるべき対応を考えたいと思います。」と答弁している。


移住者は高齢の方が多く、2000(平成12)年の提訴後も、次々と亡くなられている。


当連合会は、移住者の高齢化が進んでいる現状に鑑み、政府に対し、国家賠償法上の請求権に関する訴訟の帰趨にかかわらず、速やかに当連合会が要望した諸施策を実施し、本問題の解決を図るよう改めて強く要請するものである。


2006年(平成18年)6月7日


日本弁護士連合会
会長 平山 正剛