政府による法令外国語訳推進のための基盤整備についての会長声明
昨日、政府の法令外国語訳推進のための基盤整備に関する関係省庁連絡会議は、法令外国語訳・実施推進検討会議の最終報告を受けて、基盤整備に関する政府の取り組み方針を取りまとめた。2001年からの司法制度改革の中で、当連合会は、司法の国際化のために法令の外国語訳整備を推進すべきであると主張してきた。日本法令の外国語訳について政府がそのイニシアティヴで推進する方針が定まり、これを機に、日本法令の国際的発信がよりよい形で実現していくことを、当連合会としては歓迎するものである。
上記取り組み方針は、政府による翻訳ルール(標準対訳辞書)の策定、ルールに準拠した法令翻訳の整備(平成18年度から3年間で約200の法令の翻訳整備計画)、翻訳の品質確保、利用のための暫定的なホームページ開設と検索・参照機能を備えた本格的なホームページの設置、実施のための継続的体制の設置(平成18年度中の早い時期)を骨子としている。
この取り組み方針に基づき、将来にわたって、真に信頼性の高い統一的な翻訳を着実に進めるには、当連合会は、以下の点が重要であると考える。
第1に、翻訳整備推進計画実施に必要十分な財政的措置が講じられることである。翻訳は各対象法令の所管所轄府省の責任で実施されることになるが、翻訳整備計画に従って予定の年限までに一定水準以上の品質を有する翻訳を確実に行なうには、それに見合った予算措置が必要である。関係省庁連絡会議で意思統一するなどして、各府省が足並みをそろえてこの計画を着実に達成できるよう、府省横断的に十分な予算の確保を図る必要がある。
第2に、の継続的体制については、早急に政府内部の調整を行って設置先を確定し、充実した組織を立ち上げる必要がある。このプロジェクトの成否は、この組織の活動に大きく影響されることになると推測されるからである。これに対する予算措置や政府全体の協力体制もまた必須である。
第3に、の翻訳整備計画で示された約200の法令は、これに限定することなく、ニーズに従って将来政府の翻訳範囲を効果的に広げていく必要があり、そのためには、今後も弁護士会や経済界など、ユーザーサイドの意見をプロジェクトに反映する必要がある。
第4に、以上のような課題に適切に対処するため、今後政府に設けられる検討会議には、ユーザーサイドの国内外の有識者をメンバーに加え、その意見が直接かつ適切に反映される体制を整備すべきである。また、今後の政府の検討状況等について、パブリックコメントやヒアリングを適宜実施するなどして、広く意見を求め、それを反映していく取り組みも欠かせない。
当連合会は、この基盤整備の方針を決定するに至った関係各組織の英断にあらためて敬意を表するとともに、上記の諸点が実現されることにより、上記取り組み方針に基づく日本法令の国際的発信がより充実した形で進められることを期待するものである。
2006年(平成18年)3月24日
日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛