未決拘禁法案の閣議決定にあたっての会長談話

未決拘禁法案(「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」)が本日、閣議決定され、国会に提出されることとなった。


代用監獄の廃止を長年求めてきた当連合会としては、今回の法案が代用監獄の廃止・漸減の方向性を示すに至らず、問題が先送りされたことは誠に遺憾である。


しかし、法案は、留置施設の代用性を明確化し、それを受けて、法務大臣が国家公安委員会に対し留置施設の運営状況について説明を求め、代替収容された被留置者の処遇について意見を述べることができる旨規定され、費用償還法も維持された。また、未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議の提言では、代用監獄について、「今後、刑事司法制度の在り方を検討する際には、取調べを含む捜査の在り方に加え、代用刑事施設制度の在り方についても、刑事手続全体との関連の中で、検討を怠ってはならない」とされた。昨年の受刑者処遇法成立から今回の法案策定に至る経過を踏まえると、代用監獄を恒久化、永続化するものではないと評価することができる。


また、刑事施設視察委員会と同様に警察留置場についても視察委員会が設置されること、拘置所における弁護人の夜間・休日接見が実現することなど、今回の法案には評価すべき点も多い。法案には規定されていないものの、電話・ファックスを利用した弁護人との外部交通が一部地域において実施される見通しとなっていることも評価できる。視察委員会の実効性ある運営や、電話(テレビ電話を含む。)・ファックス使用の全国展開などを求め、その実現を図る必要がある。


2009年には裁判員制度が実現する。調書裁判から公判中心の口頭主義、直接主義への転換が迫られている。今こそ、刑事訴訟制度全体の見直しの中で、代用監獄の廃止・漸減に向けての検討を開始することが求められている。


当連合会は、「取調べを含む捜査の在り方」(取調べの可視化、取調べの時間制限など)、過剰拘禁対策、勾留・保釈要件の見直し、起訴前保釈制度の導入など、刑事裁判手続全体の総合的改革の中で、代用監獄の廃止・漸減に道筋をつけるよう、総力を挙げて取り組むものである。


2006年(平成18年)3月10日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛