六ヶ所再処理工場のアクティブ試験についての会長声明
日本原燃株式会社は、本年2月20日、六ヶ所再処理工場におけるアクティブ試験を本年3月に実施すると発表した。
アクティブ試験は、使用済燃料を実際に使用してこの工場の安全機能及び機器・設備の性能を確認する最終段階の試験であり、事実上の運転開始である。
本年1月6日、電気事業連合会は、2005、2006年度にこの工場で回収されるプルトニウムを全国16~18基の原発においてプルサーマルで利用する「プルトニウム利用計画」を公表したが、最多の原発を所有する東京電力が原発立地県の反対で実施原発を明示せず、また全電力会社が開始時期を2012年以降とし、利用場所、利用時期があまりにも具体性を欠いている。このようなずさんな利用計画をもとに再処理を進めるのは、いたずらに余剰プルトニウムを増加させ、海外から核不拡散の要請に反するとの批判を招き、また、我が国のエネルギー政策を誤った方向へ導くおそれを否定できない。
これまで当連合会は、1998年の定期総会、2000年の人権擁護大会において、再処理工場の建設、運転の停止を強く求め、2004年には六ヶ所再処理工場操業中止等を求める緊急提言を行った。その理由は、第1に、再処理技術は未だ確立しておらず、工場稼動に伴う人体、環境に対する放射能汚染が不可避である。第2に、高速増殖炉計画が頓挫し再処理によってプルトニウムを抽出してもその使い道がなく、いたずらに放射性廃棄物を増やすばかりか、余剰プルトニウムを保有しないという政府の国際公約に違反する。第3に、再処理事業には莫大なコストがかかる。電気事業連合会の試算によると、今後40年間の核燃料サイクルバックエンド費用は約19兆円、そのうち再処理コストは約11兆円という巨費を要することになり、国民経済の観点から経済的合理性が認められないことである。
アクティブ試験は、事実上の運転開始であり、使用済燃料を実際に使用することから、この工場全体、及び、周辺環境等に対する放射能汚染も現実化する。この工場が放射能によって汚染されると、廃止費用だけでも約1兆6000億円を要するとされており、事実上後戻りが極めて困難となる。よって、直ちにアクティブ試験の実施を中止すべきである。
青森県知事は、日本原燃株式会社の試験開始の要請を受けて、安全協定締結の是否を判断するため関係機関の意見を取りまとめる作業を実施中であり、早ければ、本年3月か4月には安全協定が締結され、アクティブ試験が実施されるものと予想される。
そこで、当連合会は、次の対応を緊急に要請する。
- 日本原燃株式会社は、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験を実施しないこと。
- 青森県知事及び六ヶ所村長は、アクティブ試験に係る安全協定を締結しないこと。
2006年(平成18年)3月2日
日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛