「みなし弁済」の適用に関する最高裁判決についての会長声明

本年1月13日及び19日、最高裁判所は、貸金業の規制等に関する法律43条(みなし弁済規定)について、利息制限法に定める制限利息を超過する利息を支払うことが事実上強制される場合は「任意に支払った」とは言えず、有効な利息の支払とみなすことはできないとし、「制限超過の約定金利を支払わないと期限の利益を失うとの特約による支払に任意性は認められない」とする判断を下した。


日本における金利の規制は、利息制限法により貸付の金額によって年15~20%を制限利息とし、それを超える約定は超過部分を無効とし、他方、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律は年29.2%を超える利息の約定に刑事罰を定めている。その間の利息は「グレーゾーン金利」とされ、登録貸金業者には「任意の支払」など、一定の厳格な条件を満たす場合は例外的にグレーゾーン金利の取得を認めている(みなし弁済規定)。


最高裁は本判決において、任意性の要件についても厳格に解釈する立場を明らかにしたが、それは、単に形式的な条文解釈を示したのではなく、みなし弁済規定自体の厳格解釈(平成16年2月20日判決)、貸金業者の取引履歴開示義務(平成17年7月19日)、リボルビング方式の場合での返済期間・返済金額等を契約書面に記載する義務(平成17年12月15日)を判示した一連の最高裁判決とともに、「利息制限法こそが高利禁止の大原則であり、これを超過する高利の受領は容易に認めるべきではない」とする司法府の立場を示したものと解される。


当連合会は、みなし弁済規定については、高金利を助長するなどとして、貸金業の規制等に関する法律制定当時、この規定を設けたことを強く非難し、2003年7月の「出資法の上限金利の引き下げ等を求める意見書」等でもその廃止を求めていたものであり、当連合会の考え方と軌を一にするものとして本判決を高く評価するものである。


多重債務者の数は150万人とも200万人とも言われ、破産者は年間約20万人、経済苦・生活苦による自殺者は年間8、000人にも達している。このような状況を直視し、当連合会は、貸金業界に対し、一連の最高裁判決をふまえ、その業務の適正を図ることを強く求めるとともに、今後とも、みなし弁済規定の廃止のみならず、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の上限金利を、利息制限法の制限利息まで引き下げることを求める立法運動など、多重債務問題解決の諸活動を行っていくことをここに表明する。


2006年(平成18年)2月3日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛