「未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議提言」についての会長声明

本日、未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議(以下「有識者会議」という。)の提言が公表された。当連合会としては、意見の対立の激しい諸問題について、短い期間の中で十分な調査・検討に基づく議論ができなかったことは残念であるが、有識者会議の努力に対しては敬意を表するものである。


最大の課題である代用監獄制度について、代用監獄廃止の方向性が明示されなかったことは、極めて遺憾である。


代用監獄制度の将来的な存廃については、意見の対立があった。提言では、「今回の未決拘禁者の処遇等に関する法整備に当たっては、代用刑事施設制度を存続させることを前提としつつ」とされ、さしあたり「今回」の法整備に際しては存続することが示された。そして、「代用刑事施設制度は将来的には廃止すべきとする強い意見もあることや、刑事司法制度全体が大きな変革の時代を迎えていることなどを考えると、今後、刑事司法制度の在り方を検討する際には、取調べを含む捜査の在り方に加え、代用刑事施設の在り方についても、刑事手続全体との関連の中で、検討を怠ってはならないと考える。」とされた。


このように、提言は、今後とも代用監獄制度の存廃を含めた議論が必要であることを認めており、この点は評価できる。


当連合会としては、提言におけるこれらの指摘に留意しつつ、引き続き代用監獄の廃止に向け全力で努力していくものである。


当連合会は、夜間・休日における接見や、電話・ファックスによる外部交通、警察留置場における視察委員会や、第三者機関たる不服申立審査機関の設置を強く求めてきた。提言において、これらの導入が認められたことは評価できる。


当連合会は、今後ともこれらの拡大・充実に努力していくものである。


提言は、警察留置場における懲罰を否定するものとはなっていない。現に懲罰がまったく行われていない警察留置場に新たに懲罰を導入することには、代用監獄での自白強要の危険性をさらに高めるものだとする有識者委員の強い反対意見があったところであり、当連合会としてもその導入に反対する。


当連合会は、今回の立法作業に当たり、未決拘禁制度の改革が、国際人権準則に照らし適切に実現され、運用されるよう、引き続き取り組みを強めるものである。


当連合会はまた、本提言において今後の検討課題とされた、代用監獄の廃止や捜査の在り方をはじめとする刑事司法制度全体の改革に総力を挙げる決意である。


2006年(平成18年)2月2日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛