会長談話「人権と死刑を考える国際リーダーシップ会議」を終えて

12月6日・7日の2日間にわたり、世界19カ国から集まった法律家、国会議員、研究者、さらには報道関係者、大使館関係者そして一般市民ら、延べ約300人の参加を得て、「人権と死刑に関する国際リーダーシップ会議」が盛況に行われた。これは、当連合会と欧州委員会(EC)、アメリカ法曹協会(ABA)との共催、駐日英国大使館の後援によるもので、日本で開催される人権に関する国際会議としては規模・内容ともに前例のない、まさに画期的なものであった。


会議の最終セッションにおいて、駐日欧州委員会代表部のライテラー公使からは、死刑廃止に向けた欧州社会の強い意欲が改めて示されるとともに、ECが行っている世界の死刑廃止運動に向けられた援助制度の紹介もなされ、とりわけ資金的困難に直面するアジア各国からの参加者に希望を与えた。ABA死刑モラトリアム実行プロジェクトのコールマン委員長からは、死刑制度の運用、弁護活動の基準に関する国境を越えた原則を次の国際会議で採択し、世界各国にその適用を広めるという野心的かつ建設的な提案がなされた。また、当連合会からは、EC、ABAとの連携強化に加えて、それをさらに発展させ、今回参加をみなかった死刑存置国をも巻き込んだ、弁護士会のネットワーク作りの必要性を述べた。


法制度や歴史、宗教、文化の違いを超えて、死刑制度を「人権」という共通の視点から捉えるこの会議では、各参加者が、死刑やそれに代わる刑罰の運用が、それぞれの国・地域が抱える事情に応じて、複雑な様相をみせるという現実を認識した。同時に、こうした違いを認めつつ連携し、情報・意見を交換することが、互いの国における人権状況の改善・発展に確実に寄与する、ということを確認し合う場となった。


今回の会議を出発点として、今後も当連合会がEC、ABA、さらには各国の法曹界と連携しつつ、わが国における死刑執行停止法の制定に向けた取り組みを一段と強化し、人権領域におけるリーダーシップをとっていく決意を、新たにするものである。


2005年(平成17年)12月9日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛