自衛隊のイラクへの派遣再延長に反対する会長声明

政府は、本日、「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」(以下「イラク特措法」と言う。)に基づく基本計画で定めた自衛隊の派遣期間が本年12月14日で満了する事態を受けて、基本計画を変更し派遣期間を再度1年間延長することを閣議決定した。


当連合会は、2003(平成15)年7月4日、イラク特措法案に反対する会長声明を発表して以降、会長声明及び理事会決議において、自衛隊のイラク派遣に反対し自衛隊の即時撤退を求める旨を一貫して表明してきており、昨年12月10日には、自衛隊派遣期間延長に反対する会長声明を発表した。


当連合会のこれらの一連の声明は、イラク特措法が、国際紛争を解決するための武力行使及び他国領土における武力行使を禁じた日本国憲法に反するおそれが極めて大きいこと、イラクへの自衛隊派遣がイラク特措法の「非戦闘地域」の要件を満たしていないことを大きな理由とするものである。


イラクの現状をみると、本年1月と7月にはサマワに駐屯する陸上自衛隊の宿営地にロケット弾などが着弾し、6月には陸上自衛隊車両が幹線道路走行中に爆弾で攻撃される事態が生じている。本年4月には、防衛庁は計画していた報道機関の取材を「不測の事態を排除できない」として中止した。このように自衛隊が戦闘に巻き込まれて武力行使に至る危険は依然として高い。また、航空自衛隊は多国籍軍のための輸送を行い、イラクにおいて武力行使を続けている多国籍軍との一体化が顕著である。


他方、サマワの治安維持を担当していたオランダ軍は既に撤退し、これを引き継いだ英、豪両軍も来年撤退を開始するとの報道がなされている。イラクをめぐる情勢は派遣軍隊撤退の方向へと変化しつつある。


このような状況もふまえ、当連合会は、自衛隊派遣期間の再延長に反対を表明するとともに、政府が自衛隊をイラクから即時撤退する決断を行うよう改めて強く求めるものである。


2005年(平成17年)12月8日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛