小田急線連続立体交差事業認可処分取消等請求事件についての最高裁大法廷判決に関する会長声明

本日、最高裁判所大法廷は、小田急線連続立体交差事業認可処分取消等請求事件について、行政事件訴訟法9条2項の解釈において公害対策基本法、東京都環境影響評価条例の趣旨及び目的を参酌したうえで、都市計画法に基づく都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち当該事業が実施されることにより騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は、都市計画法上当該事業の認可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有すると判示し、従来の最高裁判決(環状六号線に関する平成11年11月25日判決)をこれと抵触する限度で変更して、事業地の周辺地域に居住する者のうち、本件鉄道事業(喜多見駅付近から梅ヶ丘駅付近までの区間の連続立体交差化を内容とする都市計画事業)につき東京都環境影響評価条例に基づいて定められた「関係地域」内に居住している者は同事業の認可の取消しを求める原告適格を有するとの判決を言い渡した。


従来からわが国の行政事件訴訟の問題点として、原告適格を厳格に解釈することによる行政訴訟の門前払い(却下判決)の多さが指摘され、そのことが行政訴訟から国民を遠ざけ、ひいては行政訴訟を通じての行政の適正化を図る道を狭めていた。


今回の司法制度改革の一環として行政事件訴訟法が改正され、原告適格を拡大するために、同法9条2項に新たな考慮事項が規定された。この改正について、国会は附帯決議によって「行政による多様な国民の利益調整のあり方を十分に考慮しつつ、これまでの運用にとらわれることなく、国民の権利利益の救済を拡大する趣旨であることを留意しつつ周知徹底に努めること」(衆議院)、「公益と私益に単純に二分することが困難な現代行政における多様な利益調整の在り方に配慮して、これまでの運用にとらわれることなく、国民の諸権利の救済を拡大する趣旨であることについて周知徹底に努めること」(参議院)を求めている。


本日の大法廷判決は、この改正行政事件訴訟法の趣旨に則って本年4月1日に施行されてから間もない時期に、これらの国民的要望に沿い行政訴訟における原告適格を拡大したものである。


当連合会は、司法制度改革審議会、司法制度改革推進本部に対して行政事件訴訟の原告適格の拡大を提言し続けた立場から、本日の最高裁判所の判決を高く評価するとともに、今後も裁判所が、国民の権利利益の確保と行政の適正化のため、司法に求められる行政のチェック機能を果たすことを期待する。


2005年(平成17年)12月7日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛