広島弁護士会国賠訴訟高裁判決に関する会長声明

  1. 本日、広島高等裁判所は、広島刑務所の受刑者が広島弁護士会に行った人権救済の申立てに関し、同会会員が申立人の主張する事実を目撃したとされる他の受刑者との面会調査を申し入れたところ、刑務所長が監獄法45条2項を根拠として面会を拒否したことから、同会らが国に対して国家賠償請求訴訟を提起した事案につき、いずれも請求を棄却した原判決を変更し、同会の請求を認容する判決(以下「本判決」という)を言い渡した。
    本判決は、受刑者の改善、更生や円滑な社会復帰等のために外部交通が有する意義を適正に評価することにより、刑務所長の裁量権に制限を加え、同会会員との面会を拒否した刑務所長の処分には裁量権の逸脱、濫用があるものとして、違法である旨判示したものである。
    また、本判決は、当連合会及び弁護士会の人権擁護活動が、弁護士法1条1項に規定する使命を実現するための活動であり、国民の信頼や従前の実績等により裏付けられた事実上の強い影響力を有すること、十全な人権擁護活動のためには適切な調査活動が不可欠であることを正しく指摘しているものであって、高く評価する。
  2. 2002年10月に名古屋刑務所での死傷事件が発覚したことを契機として、行刑施設においては、違法かつ非人道的な処遇が多発しており、また、行刑当局が、それらの処遇を隠蔽するのみならず、受刑者が人権侵害事実を外部に申し立てることを妨害してきた実態が広く明らかになった。
    このような状況をふまえ、2003年12月には行刑改革会議が提言を行い、これを受け、本年5月には、監獄法の受刑者に関する規定を全面的に改正する「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」(以下「受刑者処遇法」という)が成立した。
    同法では、適正な外部交通が受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰に資するものであると明示されるなど、面会に関する規定が大幅に改められている。また、行刑施設内の人権状況については、外部の第三者機関による監視の必要性が高いことをふまえ、刑事施設視察委員会が新設されるに至っている。
    当連合会及び弁護士会による人権擁護活動は、この委員会と同様の機能を果たしているものと評価し得るのであって、本判決は、このような活動の意義を明確に確認したものである。
  3. 当連合会は、本判決を受け、受刑者処遇法の施行を待つことなく、行刑施設が人権救済の調査に積極的に応ずることを改めて強く求めるとともに、今後とも被収容者をはじめとする人権侵害を受けた者の救済活動に邁進することを表明する。

2005年(平成17年)10月26日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛