在外被爆者の健康管理手当等の国外における居住地からの申請に関する福岡高裁判決についての会長談話

  1. 本日(2005年9月26日)、福岡高等裁判所は、被爆者の健康管理手当及び葬祭料について、居住地である大韓民国からの申請を却下した処分を取り消す旨を求めた裁判で、控訴を棄却する判決を下し、国外に居住する被爆者(在外被爆者)らの請求を認容する原判決の結論を維持した。
    在外被爆者の健康管理手当及び葬祭料の国外の居住地からの申請についてはいくつかの裁判が行われている。本判決は、在外被爆者らの国外の居住地からの健康管理手当等の請求を認めた最初の高裁判決であるうえ、その理由中において、来日して申請手続を行うことが不可能ないし極めて困難であるか否かにかかわらず在外被爆者全てについて国外の居住地からの手当申請等を認めるべきものであるとした。
    当連合会は、本判決を被爆者援護法の趣旨に則った判決として高く評価する。
  2. 当連合会は、本年7月14日、「在外被爆者問題に関する意見書」において、日本政府に対し、医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当、保健手当などの諸手当並びに葬祭料の支給及び被爆者健康手帳の交付申請について、国外の居住地からの申請を認めるべきであるとの意見を表明した。当連合会が上記意見を表明したのは、在外被爆者もまた国内在住の被爆者と同様に原爆投下に起因する放射能障害などによる特異かつ深刻な被害を被っており、来日して申請することが困難な状況にあること、及び、大韓民国などのアジア諸国に居住する在外被爆者が被爆した背景には、国の植民地政策の歴史があることを考慮したことによるものである。
  3. 在外被爆者である本件訴訟の原告が、提訴後一審判決を待たずに亡くなったことに象徴されているとおり、高齢化している在外被爆者に対して、被爆者援護法に基づく援護を行うことは緊急の課題である。
    広島・長崎の両市長は、本件訴訟等において国の指導を受けてやむを得ず控訴をしたものの、被爆地の市長として忸怩たる思いがあり、国外の居住地からの各種手当等の申請を早急に可能とするよう、本年7月、厚生労働大臣に要望し、国も、国外の居住地からの健康管理手当申請を認めることを検討中であるとしているところである。
    当連合会は、国に対し、上記意見書の趣旨に沿って、速やかに、健康管理手当や葬祭料などの諸手当及び、諸手当受給の前提となる被爆者健康手帳交付について、国外の居住地からの申請を認めることを強く求めるものである。

2005年(平成17年)9月26日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛