在外日本国民の選挙権に関する最高裁判決についての会長声明

本日(9月14日)、最高裁判所大法廷は、1998年(平成10年)改正前の公職選挙法について、海外に在住する日本国民が衆参両議院議員選挙における選挙権を一切行使できなかったことが、憲法15条1項及び3項、43条1項並びに44条ただし書に違反し、立法府である国会が選挙権の行使を可能にするための法改正を怠っていたことにより国は国家賠償法上の賠償責任を負うとし、更に、本件訴訟を提起した海外在住の日本国民について次の衆議院小選挙区選出議員選挙及び参議院選挙区選出議員選挙において投票することができる地位にあることを確認する、との画期的な判決を下した。


いうまでもなく選挙権は、憲法の基本原則の1つである国民主権を支える最も重要な権利であり、憲法が採用する代表民主制も、選挙権が保障されることによって初めて成立しうる。


当連合会は、かかる選挙権の意義を明確に確認した本日の最高裁判所の判決を高く評価する。


当連合会は、1996年(平成8年)5月1日、当時の公職選挙法が海外に在住する日本国民に、衆参両議院議員選挙や最高裁判所裁判官の国民審査が認められていないことについて、衆参両議院議長や内閣総理大臣等に対して、公職選挙法や最高裁判所裁判官国民審査法等の改正を求める要望を行った。その後、1998年(平成10年)、国会は公職選挙法を改正し、衆参両議院議員の選挙権の行使を認める制度を創設したものの、暫定的な措置として、当分の間は、この制度の対象となる選挙について、衆参両議院の比例代表選出議員の選挙に限ることとされている。


当連合会は、衆参両議院が、本日の最高裁判所判決の意義を重く受け止め、海外に在住する全ての日本国民の選挙権が保障されるよう、速やかに公職選挙法の改正を行うよう、強く求めるものである。


2005年(平成17年)9月14日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛