裁判の迅速化に係る検証に関する報告書についての会長談話

本日、最高裁判所は、「裁判の迅速化に関する法律(裁判迅速化法)」 第8条に基づく検証の第1回目の報告として、「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(報告書)」を公表した。


短期間で、膨大なデータ・資料を分析し、今回の報告書をとりまとめられたことは画期的なことであり、関係者の努力に敬意を表する。


報告書では、民事訴訟及び刑事訴訟について、裁判の期間に影響を与える諸要素(期日回数、期日間隔、証人数、当事者数、事件の大まかな類型等)の全国的な統計的検証が行われている。その結果は、例えば、証人数・当事者数が多いほど審理期間が長い等、従前より法曹関係者が実感していた点が統計的に確認されたと言える内容である。また、民事第一審訴訟事件の平均審理期間が8.2月、刑事第一審訴訟事件の平均審理期間が3.2月と、裁判が全般的に迅速に処理されていることがあらためて検証された。


当連合会は、立法当時から、国民の権利保障のためには裁判の「迅速」のみではなく裁判の「適正・充実」こそが重要であること、そしてそのための司法制度及び体制の整備(人的・物的基盤整備)を図る必要があることを主張してきた。その点からすると、今回の報告書は、裁判の充実や適正に関する論証や地域的状況の検証の点では、必ずしも充分であるとは言えない。さらに、人的体制面での充実を図る基礎となるべき指標と考えられる裁判官1名当りの手持事件数、処理件数その他執務の体制についてのより深い検証がなされておらず、裁判所職員の人数及び執務体制も検証の対象とされていない。加えて、物的体制面に関しては、裁判所の法廷の数と利用頻度並びに開廷日などの項目も今回は対象とされていない。


これら今回の報告書で必ずしも充分に検証されていない点は、第2回目以降の重要な課題である。


当連合会は、今後とも、「迅速」を強調するあまり「適正・充実」をおろそかにするものとならないよう、現実の裁判の状況を注視するとともに、基盤整備法としての裁判迅速化法に定められた責務を実行し、真に国民の期待に応える司法制度を実現するため、最善の努力を尽すことを、ここに改めて表明するものである。


2005年(平成17年)7月15日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛