自衛隊のイラクへの派遣延長に反対する会長声明

政府は、昨日、イラク特措法に基づく基本計画で定めた自衛隊の派遣期間が2004年12月14日で満了する事態を受けて、基本計画を変更し派遣期間を1年間延長することを閣議決定した。


当連合会は、昨年7月4日、審議中のイラク特措法案に反対する会長声明を発表し、同年11月19日には重ねてイラク特措法に反対するとともに基本計画を定めないことを求める会長声明を発表した。本年2月3日には、自衛隊をイラクに派遣することに反対するとともに自衛隊の即時撤退を求める理事会決議をなし、本年4月17日には民間日本人の拉致事件の発生という事態を受けて、「自衛隊の派遣は、もはや『非戦闘地域における人道支援』というイラク特措法の要件を満たしていないと言わざるを得ない。」ことを指摘し、重ねて自衛隊の即時撤退と今後の派遣を行わないように求める会長声明を発表した。


当連合会のこれらの一連の声明は、イラク特措法が、国際紛争を解決するための武力行使及び他国領土における武力行使を禁じた日本国憲法に反するおそれが極めて大きいこと、イラクへの自衛隊派遣がイラク特措法の要件を満たしていないことを大きな理由とするものである。


イラクの今日の状況は、北部クルド地区を除く全土への非常事態宣言の発令及びファルージャ等における激しい戦闘等に見られるように一層悪化の一途をたどっている状況にある。特に、本年10月末には自衛隊宿営地に砲弾が打ち込まれるに至ったことや、来年3月には自衛隊宿営地のあるサマワの治安維持にあたっていたオランダ軍が撤退する予定であることなどから、自衛隊が戦闘に巻き込まれて武力の行使にいたる危険性は格段に高まっていると言わなければならない。これらは当連合会の懸念と指摘を深めるものとなっている。


基本計画に定めた派遣期間の満了は、慎重に状況を検討し、従前の政府判断を見直す好機である。当連合会は、この機会に政府が自衛隊派遣期間の延長を行わず、自衛隊をイラクから撤退する決断を行うよう改めて強く求めるものである。


2004年(平成16年)12月10日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛