諫早湾干拓事業差止仮処分決定に関する会長声明

佐賀地方裁判所は、本日、諫早湾干拓工事の差し止めを求めた仮処分申立について、有明海沿岸の漁業者の申立を全面的に受け入れ、国に対し、第一審判決言渡しに至るまで工事を続行してはならないと命じる仮処分決定を出した。


我が国最大級の干潟である諫早湾干潟とその前面浅海域を消滅させる干拓事業に対しては、国内外から多くの批判が寄せられていたが、大型公共事業の差し止めという重大な決定をされた裁判所の判断を高く評価し、深甚なる敬意を表するものである。


1997年4月の潮受堤防締め切り後は、諫早湾の堤防内部の湿地崩壊のみならず、広範囲にわたる有明海海洋構造の変化が顕著になり、「有明海異変」と呼ばれる重大な海洋環境の変化のなか、魚介類などの水産資源の枯渇、ノリ養殖業の歴史的な不振など、もはや一刻の猶予も許さない深刻な事態が生じている。


当連合会は、1997年5月以降、2度にわたる会長声明及び意見書の発表により、排水門を開放し堤防内に海水を導入すること、諫早湾干潟と有明海の再生のための開門調査を早期に実施することを求めてきた。本日の仮処分決定は、こうした一連の指摘と立場を同じくするものであり、有明海再生に向けた取組みが急務であることを一層明らかにしたものである。


当連合会は、国が工事の中止とともに、潮受け堤防の開門調査を直ちに実施し、本事業と有明海異変との関連をより明確に把握して諫早湾干拓事業そのものを中止し、諫早湾干潟と有明海の真の再生を一日も早く実現することを改めて強く求めるものである。


2004年(平成16年)8月26日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛