有事法制関連7法案・3条約承認案件の成立に対する会長声明
本日、参議院本会議において、「国民保護法案」など有事法制関連7法案・3条約承認案件が可決された。
当連合会は、一昨年3月、「武力攻撃事態対処法」等有事法制3法案の国会提出が閣議決定された直後から、同法案が憲法の根本規範である人権保障原理や国家の民主的な統治構造を大きく変質させる危険性があることなどを指摘し、慎重かつ徹底した審議等を求める旨の意見を表明し、同法成立後も、同法制の具体化や運用について、法律家団体として、憲法と人権保障の観点から検証していくことを表明してきた。
また、当連合会は本年3月に国会に上程された、「国民保護法案」等有事法制7法案・3条約承認案件に対しても、国民主権、基本的人権の保障、平和主義の観点から検討を行ってきた。「国民保護法案」は、国民保護措置の実効性に問題があり、平時から国民に危機意識を増幅させる一方、国民の知る権利を制約する危険性を有するなど問題が多いこと、「米軍支援・自衛隊活動に関する法案・条約承認案件」も、憲法が禁止する集団的自衛権の行使や、交戦権の行使を可能とする措置を内容とし、市民の生活や権利に対する幅広い制約を及ぼす危険性を有するものであることを指摘し、抜本的見直しがなされない限り、審議期間の限られた今国会において拙速に審議・採決することに強く反対してきた。
有事法制関連法案・条約承認案件のうち、既に当連合会が意見書を提出したものについては、今後の国民生活、人権保障、統治機構を大きく変容させる可能性を秘めたものであり、広く国民的議論を行う必要があったが、衆参両院とも、十分な論点整理や審議が行われず、法案の必要性や問題性が国民の前に明らかにされてこなかった。当連合会は、本法案等が衆議院で可決された際、参議院において慎重かつ徹底的な審議を行うことを強く求めたが、参議院においても徹底した審議が尽くされないまま可決されたことは、誠に遺憾である。
有事法制は、一般に「有事」のときのみ作用するものではなく、「平時」においても国民の権利自由を規制する危険性を有するものである。当連合会は、平時においても有事法制の名の下に憲法が保障する人権が規制され、国民主権がないがしろにされたりすることのないように、有事法制のあり方や運用について、憲法の視点から今後も引き続き厳しく検証していく決意である。
2004年(平成16年)6月14日
日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛
以下の法案と条約承認案件
「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案」(「国民保護法案」)
「武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案」(「米軍支援法案」)
「自衛隊法の一部を改正する法律案」(「自衛隊法改正法案」)
「武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案」(「特定公共施設等利用法案」)
「武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案」(以下、「外国軍用品海上輸送規制法案」という)v「日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援,物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定」(「改定ACSA」)