裁判員法の成立にあたっての会長声明

1 本日、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案」(裁判員法案)が、「刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」(刑訴法改正法案)とともに、参議院本会議で可決され、成立した。


裁判員制度は、法の支配をこの国の血肉とし、日本国憲法のよって立つ個人の尊重と国民主権を真の意味で実現することにおいて、今次司法制度改革の象徴的制度である。1943年にわが国の陪審法が施行を停止されてから約60年を経て成立し、広く国民が主権者として裁判に参加するこの裁判員法は、司法に健全な社会常識を反映させる意義を有するに止まらず、わが国の民主主義をより実質化するものとして、歴史的に大きな意義を有するものである。


2 しかし、この制度が実施されるまでには、達成すべき多くの課題がある。


まず、裁判員の実質的・主体的関与を真に可能にするとともに、被告人の防御権を保障した刑事手続の確立を図ることが必要である。そのためには、新たに創設された証拠開示制度や被疑者段階からの国選弁護制度などが適切に運用されることに加え、取調べ過程の可視化(録画・録音)、身体拘束制度の抜本的改革をはじめとする制度改革が、施行までに実現されることが不可欠である。


また、国民がすすんでこの制度を担うためには、十分な情報提供、誰もが参加しやすい環境整備、守秘義務の範囲の明確化なども、重要な課題である。


3 日本弁護士連合会は、この制度の導入によって、広く国民が司法に対する理解・支持を深め、司法がより強固な国民的基盤を得ることを願うものである。


そのために当連合会は、政府及び最高裁判所と協力した国民への広報活動、この制度のもとでの訴訟活動にむけた研修など、制度実施のための諸課題に取り組むべく新たな組織体制を立ち上げ、また、既に設置された法曹三者による「刑事手続の在り方等に関する協議会」などを通じて、真に適切な刑事手続の運用確保と必要な制度改革の実現を目指すものである。


当連合会は、全国の弁護士の参加を得て、この歴史的課題に全力を挙げて取り組み、国民の期待に応える決意である。


2004年(平成16年)5月21日


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛