「行刑改革会議提言」についての会長声明

本日、行刑改革会議の提言が公表された。会議は、短期のうちに、受刑者、刑務官・刑務所の医師に対するアンケートを実施し、国内と海外の施設調査を実施するなど、処遇と施設運営につき内外の実情を把握する姿勢を示された。そして、3つの分科会に分かれ議論を深められた。委員の皆さんの熱心な討論と短期間のうちに改革のための提言をまとめられた努力に敬意を表したい。


この提言は、受刑者処遇の基本的なあり方として、受刑者の人間性の尊重、自発的で自律的改善更生の意欲を持たせる処遇を求めている。また、受刑者の権利義務と職員の権限を法定することを求め、そのための新たな監獄法の制定を求めている。


さらに、これを具体化する提案として刑務作業の柔軟な運用、累進処遇制の廃止、薬物依存者の処遇の充実、保護房収容の適正確保、所内規則の見直し、昼夜間独居拘禁期間を必要最小限にとどめること、懲罰制度の法整備、一定の基準のもとでの電話の導入など外部交通の一定の拡大を提言している。


また、施設運営の透明化のために、一般市民からなる刑事施設視察委員会の創設、情報公開、地域住民との連携の強化などを求めている。視察委員会の設置は当連合会の年来の要望であり、今次行刑改革の中でも特に高く評価することのできる提案である。


刑務所医療の問題点についても、矯正医療が国民の医療水準と等しいものであることを確認し、地域医療機関との連携の強化などを求めている。職員の人権意識の改革のための実務的研修の充実、職員の大幅な増員などの人的・物的体制の整備が提言されている。


当連合会の立場から見れば、規律秩序と所内規則の見直し及び外部交通拡大の不徹底、人権救済のための制度として刑事施設不服審査会の権限が法務大臣の諮問機関として勧告の権限しかなく不充分なこと、医療の保安体制からの独立性を高め医療水準を維持するための厚生労働省への移管などの制度改革が今後の検討課題とされたことなど、いくつかの問題点を指摘せざるを得ないが、提言の方向性は賛同することができ、今後の行刑改革の礎になるものと評価することができる。


当連合会は、1975年以来、規律優先から人間性尊重への転換を図る監獄法の全面改正を求め、1982年に拘禁二法案が国会に提出されてからは、代用監獄廃止と被拘禁者の人権保障を求める立場から、刑事施設法案については抜本的修正、留置施設法案については廃案を求めてきた。この立場を堅持しつつ、提言を基礎として、新たな監獄法の改正案の制定を求めていきたい。この改正案は、刑事施設法案の部分的修正であってはならないし、また、代用監獄の廃止に逆行する内容も含まれてはならない。


当連合会は、国民の支持と理解のもとに、この提言に基づく今後の立法化作業に全面的に取り組み、21世紀にふさわしい国際的な人権水準に合致した真の行刑改革の実現をめざす所存である。


2003年(平成15年)12月22日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹