ヤミ金融対策法案に関する声明

現在、「ヤミ金融対策法案」に関する与野党間の調整が行われており、「出資法の金利規制に違反する貸付契約は無効であり、元本の返済は不要である」ことを法律上明記するかどうかが、最大の争点となっていると伝え聞く。


当連合会は、昨年11月22日、「ヤミ金融対策法の制定を求める意見書」において「契約無効・元本返済不要」とする規定をもうけるよう提言し、各政党に繰り返し要請して来た。また、全国の弁護士会はヤミ金融被害者の救済活動を行なって来た。この活動のなかで、ヤミ金融の蔓延に終止符を打つためには、国が、ヤミ金融による支払請求には一切助力しないことを明確に宣言して、ヤミ金融を経済的に立ち枯れさせることが必要であるとの確信を持つに至っている。


そのような折り、この6月14日に、大阪府八尾市で、ヤミ金融に対する借金返済を苦にした60代の夫婦が81歳の兄とともに鉄道自殺をするという痛ましい事件が起きた。報道によると、被害者は5月12日に八尾警察署を訪れて「1万5000円を借り、既に利息10万円を払っている」と相談していたという。だが、警察がヤミ金融業者を検挙するよりも前に、たった1万5000円のために、3人もの生命が失われてしまった。


これ以上、このような犠牲を出さないためには、実効性のある総合的なヤミ金融対策を打ち立てる必要がある。行為規制の強化や罰則の強化、開業規制の強化などは、警察や行政当局にヤミ金融を取り締まるための大きな武器を与えるものである。しかし今や、警察や行政当局だけにヤミ金融問題の解決を委ねれば足りるような事態ではない。現実に被害者救済に当たっている弁護士あるいは被害者自身にヤミ金融と闘うための武器を与え、社会全体の力をもってヤミ金融の根絶に向けた取り組みが出来るようにすべきである。


そこで当連合会は、国会に対し、「ヤミ金融対策法案」の早期成立と、「出資法の金利規制に違反する貸付契約は無効であり、元本の返済は不要である」ことを法律上明記するよう、改めて強く要請するものである。


2003年(平成15年)6月27日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹