行政訴訟制度の抜本的改革を求める会長声明

司法制度改革審議会は、平成13年6月に答申された意見書において、政府に対し、行政に対する司法審査の在り方に関して、「法の支配」の基本理念の下に、司法及び行政の役割を見据えた総合的多角的な検討を早急に開始することを求めた。


これは、司法による行政に対するチェック機能を十分に果たし得ていない現行の行政訴訟制度に抜本的な改革を迫り、もって、国民が自ら個人の尊厳と幸福に重きを置く社会を築き国家の健全な運営を図ることに責任を負うものへと我が国の基本的ありかたを再構築することを目指したものである。

日本弁護士連合会は、審議会意見書が示した改革の方向性を積極的に評価し、司法による行政に対するチェック機能を充実・強化するために、(1)個人の権利救済のみならず行政の適法性の確保をも目的とした、(2)門前払いを許さない、(3)誰もが利用しやすい制度へと抜本的に改革するため、本年3月13日、「行政訴訟制度の抜本的改革に関する提言」として「行政訴訟法案」を明らかにした。


他方、司法制度改革推進本部の行政訴訟検討会においても、意見書が求める改革の重要性を認識し行政訴訟制度の抜本的改革に向けた幅広い議論が、これまで活発に進められてきた。その結果、検討会委員全員が概ね一致した課題(被告適格、仮の救済の整備・充実等)に加えて、例えば、行政訴訟の対象の拡大、原告適格の拡大、義務づけ訴訟などの導入による救済方法の拡大等、その他多数の論点についても、大方の検討会委員においてその意見が一致するに至った。


司法制度改革推進本部は、少なくともこれらの課題について、国民的監視の下で、問題を先送りすることなく、抜本的改革を行う責任がある。


日本弁護士連合会は、司法制度改革推進本部に対し、上記課題についての具体的実現に向けて、全力を挙げてこれに取り組むことを求めるものである。


2003年(平成15年)5月19日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹