外国人学校卒業生の国立大学受験資格問題に関する会長声明

1. 2003年3月6日、文部科学省は、外国人学校卒業生の国立大学入学資格に関して、英国及び米国の民間評価機関の認定を受けたインターナショナルスクールの卒業生に限って、入学資格を付与する旨の方針を表明し、同月末に告示を改正し、同年4月より施行すると発表した。


しかし、この方針によると、朝鮮学校などアジア系の外国人学校は上記機関の認定対象外であるため、それらの卒業生には依然として入学資格が与えられないことになる。


2. 当連合会は、1998年2月20日、朝鮮学校の大学入学資格等に関する人権救済申立事件において、「学校教育法第1条の各義務教育課程、高等学校教育、大学に相当する教育を授受しているものにその資格を認めず、法律に根拠を持つ公的な資格を認定する試験を受験させないことは重大な人権侵害である」と判断し、内閣総理大臣及び文部大臣(当時)に対して、そうした事態を速やかに解消するよう勧告している。


また、日本国が批准又は加入している国際人権諸条約に基づく条約実施監査機関である各委員会からも、日本政府に対して以下のとおり「懸念と勧告」がなされている。


  1. 「委員会は、朝鮮学校が承認されていないことに懸念を抱く」(1998年11月5日自由権規約委員会)
  2. 「朝鮮学校のようなマイノリティの学校が、たとえ国の教育カリキュラムを遵守している場合でも正式に認可されておらず、したがって中央政府の補助金を受け取ることも、大学入学試験の受験資格を与えることもできない事について、懸念する」(2001年8月31日社会権規約委員会)
  3. 「委員会は、高等教育機関へのアクセスにおける不平等がコリアンの子ども達に影響を与えていることに、とりわけ懸念する」(1998年6月5日子どもの権利委員会)
  4. 「在日コリアンの生徒が高等教育へのアクセスにおいて不平等な取扱いを受けていることを懸念している」(2001年3月20日人権差別撤廃委員会)

3.当連合会は、文部科学省に対して、当連合会の上記勧告および各条約実施監査機関の日本政府への「懸念と勧告」を重く受けとめ、朝鮮学校など日本の高校と同程度の教育実態を有すると判断される外国人学校卒業生に対する国立大学の入学資格制限を撤廃し、在日外国人の教育を受ける権利を広く保障することを強く求めるものである。


2003年(平成15年)3月17日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹