裁判迅速化法案の閣議決定にあたって(声明)

本日、政府は裁判を2年以内のできるだけ短い期間内に終わらせることをめざす裁判迅速化法案を今通常国会に提出することを閣議決定した。


もとより、迅速な裁判を受けるのは国民の権利であり、日弁連としても、充実した裁判が早期に進行するよう法改正および裁判所等との協議などを通じて努力してきたところである。その結果、今日では裁判は従来より相当早く進行するようになり、1審判決まで2年以上かかるのは民事裁判では7.2%、刑事裁判では0.4%しかない状況になっている。


一部の裁判が長期化している原因は、たとえば刑事裁判において捜査機関の密室での取り調べにもとづく調書の信用性が争われていることにある。これを解消するためには、取り調べ過程をビデオ録画することが不可欠である。また、同時に保釈を原則とすること、検察官手持ち証拠を事前に全面開示することなど、制度を抜本的に改革しなければならない。民事裁判では、ディスカバリー制度の導入が必要である。さらに、全国各地に裁判官が常駐していない裁判所があるという状態は速やかに解消されなければならない。そのためには、裁判官等を増員し、物的施設を拡充することが必要である。国は「司法インフラ倍増計画」をたてて裁判の充実・迅速のための予算措置を講じるべきである。


日弁連は、裁判の迅速化は、裁判の適正・充実と一体のものとして行われるべきであると主張し、この間、司法制度改革推進本部などと折衝してきた。国民の納得のいく裁判が迅速にすすめられるべきであり、裁判の充実という視点を欠落させたまま「2年以内に終結する」という数値目標のみが一人歩きすることになれば、裁判の拙速化をもたらし、裁判に対する国民の信頼を裏切ることになる。


さらに、この法案が当事者に2年内に裁判を終結させる責務を負わせていることには法令違反の疑いもあり、削除すべきである。


よって、真に国民の充実した迅速な裁判を受ける権利が実現するための法案となるよう、日弁連は本法案の修正を強く求めるものである。


2003年(平成15年)3月14日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹