最高裁との弁護士任官等に関する協議の取りまとめにあたって(会長談話)

日弁連と最高裁は、本年4月、「弁護士任官等に関する協議会」を設置し、おおむね月2回のペースで精力的に協議を重ねてきました。その結果、本日、当面講ずべき措置について、取りまとめの合意が成立しました。


この間、最高裁が、弁護士からの裁判官任官を大幅に拡大することが極めて重要であるとの基本認識の下に、率直かつ真摯に本協議のとりまとめのために尽力されたことに敬意を表するものです。


日弁連は、この協議にあたって、任官の基準と手続を透明化・客観化し、説明責任の要請に応えたものにすること、裁判官制度改革に向けて大量の弁護士任官が可能となるような任官システムを構築すること等を基本方針として臨みました。


今回の取りまとめは、おおむね日弁連の方針に添う内容のものになっており、弁護士任官への道を大きく広げるものであります。


すなわち、第一に、これまで厚いヴェールに覆われて任官拡大の障害になっていた任官の基準・手続きについては、日弁連が、この取りまとめにおいて明記された弁護士会の推薦基準・手続を経ることを通じて、優れた裁判官候補者を推薦するよう努め、最高裁がこれを了承するということになりました。また、不採用の場合、本人の申し出があれば、その理由が書面で開示されることになりました。


第二に、多様な任官形態の道が開かれました。通常任官の外、5年程度の短期任官、倒産・知的財産・商事・家庭事件などの専門分野別任官の形態が設けられ、これに積極的に取り組むことになりました。


さらに、当面民事・家事の調停事件に限るとはいえ、日弁連が提言した非常勤裁判官制度を導入する方向で具体的な検討が開始されることになったのは大きな前進です。弁護士が業務を継続しつつ裁判官となることは、市民感覚にかなった裁判を実現する上で極めて有益であり、また、裁判官制度を大きく変える基盤作りにも役立つものです。


日弁連は、今回の取りまとめを踏まえて、全国の弁護士及び弁護士会とともに、今後、会を挙げて、多様で豊かな知識・経験と人間性を備えた質の高い裁判官を安定的に確保するため、弁護士任官の推進に全力を尽くす所存であります。


2001年(平成13年)12月7日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡