組織的犯罪3法案に関する会長談話

談話

最近の新聞報道によれば、政府及び自民党は、通信傍受法を含むいわゆる組織的犯罪対策3法案について、一部野党との協議で修正案を作成し、5月中にも衆議院法務委員会において採決を行う方向での検討が伝えられている。


しかし、衆議院法務委員会における法案審査は、昨年5月に与野党の質疑が行われて以来審議がとだえた。今年に入り、去る4月28日に第1回目の参考人質疑が行われたが、立法の必要性の是非が論じられただけで、法律案の内容である個別具体的な条文規定については、ほとんど議論がなされていない。


当連合会は、総会決議及び昨年2月に発表した意見書において、法律案の前身である法律案要綱骨子に対して、多岐にわたる問題点を指摘したところである。今回の法律案は、いまだ行われていない犯罪行為に対し通信傍受という新たな捜査手法を導入し、構成要件が曖昧なままに組織的犯罪の重罰化と広範囲な犯罪類型にマネー・ローンダリング処罰を設けるなど、刑事司法制度の根幹にかかわる大変革をもたらすものであり、慎重な上にも慎重な審議が尽くされなければならないものである。


検討中と伝えられている修正内容は、通信傍受の対象犯罪を薬物犯罪、銃器犯罪などに限定するとされているが、当連合会が意見書で指摘したように、組織的犯罪に限定されていないばかりか、まだ発生していない将来犯罪や令状に記載されていない別件事件の傍受も認めている。また、犯罪と関係する会話かどうかを識別する該当性判断の傍受についても、必要な最小限度の範囲に限るべきであるのにその手続が示されていない。


報道された修正内容では、犯罪とは無関係な多くの通信が捜査機関の監視化に晒されることになる。さらに、組織的犯罪の重罰化やマネー・ローンダリングについては、何らの議論もされていない状況に危惧を禁じ得ない。


当連合会としては、国民の人権侵害の危険に直結するこれらの法律案について、国民の代表者である国会が具体的内容に則して十分な議論を尽くしていくよう強く求めるものである。


1999年(平成11年)5月14日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹