「拷問及びその他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い又は刑罰を禁止する条約」(拷問等禁止条約)の批准承認案の国会提出を歓迎する会長声明

政府は、開会中の通常国会に「拷問及びその他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取り扱い又は刑罰を禁止する条約」(拷問等禁止条約)の批准承認案を提出する予定である。


当連合会はこれまでに、1988年の第31回人権擁護大会「人権神戸宣言」、1991年の第42回定期総会「人権4条約の批准促進を求める決議」、1998年の第41回人権擁護大会「人権の国際的保障とその効果的実施を促進する宣言」等において、同条約の早期批准を求めてきた。


同条約は、1984年に採択され、批准国数は既に112カ国(1999年1月13日現在)を数え日本の批准が待たれていた。同条約は拷問と非人道的な取り扱いなどの禁止(2条・16条)だけでなく、拷問などを受ける危険がある国への強制送還の禁止(3条)、取調の規則などの再検討(11条)、拘禁・取調を担当する職員への拷問等の禁止に関する教育・研修(10条)などを具体的に定めている。


このたびの日本政府の決定は、拷問の禁止と被拘禁者に対する人道的な取り扱いに向けた決意を示したものである。当連合会は、政府の決定を心から歓迎し、国会が一日でも早くその批准を承認することを求める。日本政府の批准は、同条約の批准が遅れているアジア地域の諸国の批准に弾みをつける上でも大きな意義を有するものである。


条約批准後1年以内には第1回の政府報告書の提案がなされ、引続き、これについての審査が行われる。昨年10月の国際人権(自由権)規約委員会による日本政府報告書に対する最終見解では拷問等禁止条約の審査対象でもある警察拘禁、刑事拘禁、入管収容施設などについての懸念事項の指摘と改善の勧告がなされた。拷問等禁止条約の第1回審査までに政府はこれらの事項について具体的な改善に取り組むことを期待したい。


なお、政府は同条約22条に定める個人通報については、国際人権(自由権)規約の第一選択議定書の批准が未了であることなどを理由に、受諾宣言をしない意向だと伝えられる。同議定書は国際人権(自由権)規約の効果的な実施のために当連合会が前述した諸決議においても最も強くその批准を求めている国際人権条約である。同議定書への批准は、上記国際人権(自由権)規約委員会の最終見解においても勧告されている。当連合会は同議定書の早期批准を重ねて求めるとともに、拷問等禁止条約の個人通報制度も受諾するよう求めるものである。


1999年(平成11年)1月28日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹