法制審議会総会における要綱骨子採択に関する会長談話
法制審議会は、本日、「少年審判における事実認定手続の一層の適正化を図るための少年法の整備等に関する要綱骨子」を採択しました。
当連合会は、さきに平成10年12月11日、会長談話を発表し、法制審議会少年法部会で採択された要綱骨子案には、少年に対する適正手続の保障が極めて不十分であること、特に、現行職権主義構造の下で検察官関与を認め、予断排除の原則や伝聞証拠排除法則を採用していないこと、検察官の関与する事件の範囲がきわめて広いこと、検察官の抗告権を認めていること、大幅な観護措置期間の延長を認めていること、適正手続の要である必要的弁護士付添人制度を検察官が関与した事件に限定していることなど、重大な問題があることを指摘しました。
本日採択された要綱骨子による法改正がなされるならば、大人よりも防御能力の弱い少年が大人の刑事事件よりもはるかに不利益な状態におかれることになり、また、刑罰対象年齢の引き下げなど少年に対する厳罰化の動きと相まって、少年自身の立ち直る力を信じ、その支援を目指すという少年法の理念は根本的に変更されてしまうおそれなしとしません。
当連合会は、少年法が教育基本法や児童福祉法とならんで、少年の健全な成長を支える基本法であるとの認識のもと、法制審議会の討議を通じ、少年法の保護主義の理念を護り、少年に対する適正手続保障と被害者の権利を尊重するための試案を明らかにするとともに、かかる重要な基本法である少年法の改正にあたっては、少年と日々接触している心理学者、精神科医、児童福祉や教育関係者、家庭裁判所調査官、保護矯正関係者、被害者など様々な立場の方々の声を直接聴取しながら慎重に審議すべきであると主張しましたが、これがいれられぬまま採択に至ったことは極めて遺憾であります。
当連合会は、要綱骨子による少年法改正に反対し、真に少年の健全育成の理念にもとづいた少年司法制度改革の実現をめざす決意であります。
1999年(平成11年)1月21日
日本弁護士連合会
会長 小堀 樹