組織的犯罪対策三法成立に関する会長声明

本日、参議院本会議において、通信傍受法を含むいわゆる組織的犯罪対策三法案が可決・成立した。


当連合会は、これまで定期総会決議及び意見書において、本法案のもとになった法務省の参考試案及び法律案要綱に対して、多岐にわたる問題点を指摘するとともに、法案が国会に提出されてからも、通信の秘密の不可侵、プライバシーの保護及び適正手続きの保障など憲法上の疑義、刑事法制上の問題点や立法の当否について十分な審議を尽くすよう求めてきた。しかしながら、法案に対して懸念を示す多くの世論があるにもかかわらず、国会において、参議院法務委員会での強行採決を容認したまま、可決したことはきわめて遺憾である。


衆議院の付帯決議において、政府に対し市民団体などの正当な活動を阻害することがないような格段の配慮や「疑わしき取引の届出」に係るガイドラインの作成などが求められ、参議院法務委員会の審議の中では、インターネット傍受の問題性、携帯電話傍受の技術的困難性など新たな問題点が次々に指摘された。当連合会は、今回成立した組織的犯罪対策三法の運用にあたっては、国会での審議状況をも踏まえて、国民の人権がいささかも侵害されないよう慎重なうえにも慎重な運用を強く求めるとともに、その運用を厳しく監視していくものである。


また、三法は、傍受令状の発付、傍受ができる期間の延長、没収保全等の手続きなどについて政令、最高裁判所規則で定めることとしている。さらに、国会での審議過程で、政府から該当性判断にあたっての最小化手続きの明文化、報道機関の取材に対する制限が表明されている。これらの政令、規則は、国会で指摘された問題点など人権に配慮して策定されるべきであり、当連合会としては、その立場から、今後も積極的に意見を述べていく所存である。


1999年(平成11年)8月12日


日本弁護士連合会
会長 小堀 樹