甲山無罪判決に関する会長声明

3月24日、神戸地方裁判所は、いわゆる「甲山事件」の殺人被告事件と偽証被告事件につき、差戻前の一審に引き続き、いずれも二度目の無罪判決を言い渡した。この事件は、発生以来およそ四半世紀、起訴後20年を経過していて、わが国刑事裁判史上まれに見る長期裁判となった。


この事件は、逮捕、不起訴、検察審査会の不起訴不当議決、再逮捕、起訴、差戻前の一審の無罪判決、大阪高等裁判所の破棄差戻判決という、異例の展開を辿ってきた。このことを考慮しても、20年もの間、裁判が続いてきたこと自体、憲法が被告人に保障する迅速な裁判を受ける権利を侵害したこととなる。加えて、同一事件につき二度にわたり言い渡された無罪判決であること等を考慮するとき、右無罪判決を尊重して、被告人を一日も早く刑事裁判から解放すべきであり、このことこそ国民の司法に対する信頼に応える最も正しい道であると確信する。


1998年(平成10年)3月27日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫