「スポーツ振興くじ」(通称「サッカーくじ」)法案に対する会長声明

議員提案にかかる「スポーツ振興くじ」(通称「サッカーくじ」)法案が、3月17日、参議院文教・科学委員会で、一部修正の上可決された。今後、3月20日の参議院本会議で可決されて衆議院に送付される予定と報道されている。


サッカー「くじ」は、サッカーゲームの勝敗を予想し、結果が的中すれば金銭を得るという性質に照らし、刑法が禁じているとばく行為に該当するものである。しかも、青少年に人気が高いJリーグを対象とする点で、青少年のスポーツ観に悪影響をもたらすおそれがきわめて高い。


法案は、この点を配慮して、19歳未満の子どもに「くじ」を売ることなどを禁じているが、現実には子どもが購入するのをくい止めることは至難である。さらに、子どもが私設「くじ」をつくって、他の子どもに売りつける(のみ行為)などの新たな非行の誘因となることも予想される。


今回の修正でも、法案の持つ基本的な問題点は何ら解消されていないばかりか、「児童・生徒に悪影響があると認めるときは、文部大臣はくじの実施を停止できる」旨の規定や、選手・監督などの収賄の処罰規定を新たに加えたことは、「くじ」の問題性を法案自体があらためて一層強く認めたことを意味している。ギャンブル社会化がすすんでいるわが国において、これ以上、新たな公営ギャンブルを創設すべきでない。


現在、子どもをめぐる深刻な事件が連日マスコミで報道されている。子どもは、家庭、学校、地域で、充実感を持てないまま、イライラやストレスを抱えた状態に置かれている。いま、おとながなすべきことは、子どもを取りまく環境をより良い状況に整えることであって、子ども社会にギャンブルを持ち込むことではない。


青少年の健全な成長を支えるためにも、スポーツ振興に必要な予算は、政府において措置するのが当然である。


以上の理由により、当連合会は「スポーツ振興くじ」法案に重ねて反対するものである。


1998年(平成10年)3月18日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫