「家電等再商品化法案」に対する会長声明

政府は、今国会に、「特定家庭用機器再商品化法」案(家電等再商品化法案)を提出し、2001年からの実施をめざすとしている。


法案提出の理由として、廃家電機器を破砕処理したシュレッダーダストから有害物質が検出され、環境汚染の原因となっていることが豊島事件等で社会問題となり、シュレッダーダストの処分方法も1996年4月から全面的に管理型処分場への埋立に変更されたものの、管理型処分場の残余年数が1.2年と逼迫していることがあげられている。


法案は、家電製品等の製造業者や輸入業者(製造業者等)に、廃家電機器の引取義務と再商品化実施義務を課す点で、評価できるが、次のような問題点がある。


  1. 法案は、製造業者等が消費者に対し、一方的に、回収や再商品化に関する費用を限度として引取料金を設定し、これを請求できるとしている。
    法案のように、回収費用や再商品化費用を排出時点で消費者に課す案は、費用の支払いを免れようとして不法投棄が増加する可能性があるばかりか、製造業者等が再商品化しやすい製品を設計し製造する動機づけに乏しいと言わざるを得ない。
    日弁連は、これまで、資源循環型社会の構築のためには、製品価格に再商品化費用等を織り込むことが望ましい旨の意見を述べてきたが、製造業者等に再商品化への動機づけを与えるという観点からすれば、製造業者等にも、再商品化等の費用を負担させるべきであり、再商品化等の費用の全額を、排出時に消費者に負担させる仕組みは適当ではない。
  2. 法案では、小売業者に引き取られた廃家電機器は、当該機器の製造業者等に引き渡されることになっており、引き渡されない事態を防止するために、小売業者に対して、主務大臣が勧告したり措置命令を出したりすることができることになっている。しかし、これだけでは小売業者に引き取られた廃家電機器が回収費用とともに処理業者に横流しされるおそれがあり、不十分である。
    こういった事態は、法案の仕組みを根底からなし崩しにしかねないので、違反した小売業者の業者名を公表したり、直罰規定を設ける等、廃家電機器の横流しや回収費用の流用ができないようにすべきである。
  3. 法案では、製造業者等に引き渡された廃家電機器は、再商品化と熱回収のいずれかにむけられることが予定されているが、熱回収の名目でその大部分が焼却されるようなことになると、ダイオキシン類の発生等新たな環境汚染の原因ともなりかねない。
    そこで、再商品化が原則であることを明確にするとともに、再商品化の具体的目標値を設定して、これを達成しない製造業者等については業者名を公表したり、罰金を課すなどして、再商品化を促す実効性のある規定を設けるべきである。
  4. 法案は、現在でも廃家電機器の2割を占める市町村の回収ルートを補完的に残すとしているが、その場合、小売業者の引取料金よりも安価な回収費用しか徴収していない市町村ルートに大量の廃家電機器が流れ、保管スペースの確保などの点において、市町村の負担が著しく増加する危険性がある。これを防止するための有効な手当てが定められるべきである。

少なくとも、以上の問題点が、国会での審議を通じて是正され、資源循環型社会の実現に資する法律が制定されることを切望する次第である。


1998年(平成10年)3月18日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫